作成日:2025年6月1日|更新日:2026年10月7日
POLICY & REGULATION
日本の洋上風力で、どの海域に、どの事業者が、何年間、いくらで発電するかを決めているのが海洋再エネ整備法です。2026年4月の改正で、旧称の「再エネ海域利用法」から名前が変わりました。同じ改正で、対象は領海の外側の排他的経済水域(EEZ)まで広がりました。2019年の施行から7年余りで、国が指定した促進区域は12海域です。このうち、2026年10月時点で運転しているのは五島市沖の浮体式16.8MWの1件だけです。この法律が決めるのは「場所と事業者」までで、建設をやり切れるかどうかは価格とコストで決まります。
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2025年6月11日に公布された改正法が2026年4月1日に施行され、題名が「海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に関する法律」に変わりました。領海と内水に限られていた対象が、EEZまで広がっています。
領海・内水では、国が区域を決めて公募し、1事業者を選びます。EEZでは、国が「募集区域」を示し、事業者の申請を審査して仮許可を出します。申請区域が重なったときに限り、最も適切な計画を比べて選びます。
促進区域は12海域ありますが、運転中は五島市沖の1件です。第1ラウンドの3海域は事業者が撤退し、再公募を待っています。法律は区域と事業者を決めますが、事業が最後まで成り立つかは、落札した価格と建設コストの関係にかかっています。
2026年4月の改正で何が変わったか:題名と対象海域
この法律は2018年12月7日に公布され、2019年4月1日に施行されました。洋上風力のために一般の海域を長く使うルールを、国として初めて定めた法律です。それまでは、海を30年近く使う事業でも、統一された手続きがありませんでした。事業者は港湾管理者や漁業者と個別に話をまとめる必要があり、計画が通るかどうかを見通しにくい状態でした。
2025年の改正(令和7年法律第59号)は、2025年6月11日に公布され、2026年4月1日に施行されました。変わった点は大きく3つです。
| 項目 | 改正前(2019年4月〜) | 改正後(2026年4月〜) |
|---|---|---|
| 題名 | 海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律(再エネ海域利用法) | 海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に関する法律(海洋再エネ整備法) |
| 対象海域 | 領海と内水 | 領海と内水に加え、EEZ |
| 環境の調査 | 事業者が環境影響評価(アセスメント)を最初から行う | 区域の指定前に、環境大臣が海洋環境の調査を行う |
領海は、海岸線から12海里(約22km)までの海です。EEZ(排他的経済水域)はその外側で、200海里(約370km)までの海域を指します。EEZでは、漁業や資源の利用について沿岸国が権利を持ちます。日本の洋上風力の適地は、遠浅の海が少ないため、岸から離れた深い海に多く残っています。EEZを対象にしたのは、その海域で事業を立ち上げるための入口をつくるためです。
環境の調査も変わりました。改正後は、国が区域を調べた後に環境大臣が海洋環境の調査を行い、結果を公表します。公募で選ばれた事業者は、環境影響評価法の手続きのうち、配慮書と方法書の段階を省けます。どの項目をどう調べるかを決める、最初の段階です。事業者ごとに同じ海域を何度も調べる手間を、国の調査で減らす狙いです。ただし、施行前に指定された区域と、施行前に国の調査が始まっていた区域には、改正前のルールがそのまま使われます。
EEZの面積がどれだけ広がり、そのうち実際に使える海域がどれほどかは、別の記事で詳しく扱っています。
👉 再エネ海域利用法改正でEEZ拡大へ(2026年版):開かれた10倍のフロンティアと実行可能領域
領海と内水の手続き:国が区域を決め、公募で1事業者を選ぶ
領海と内水では、経済産業大臣と国土交通大臣が促進区域(国が事業者を公募すると決めた海域)を指定します。指定の基準は、法律の第10条に7つ並んでいます。
- 風や波などの自然条件が発電に向いていること
- 航路や港湾の利用に支障がないこと
- 建設や保守のために、近くの港と一体で使えること
- 送電網(系統)につなげる見込みがあること
- 漁業に支障を及ぼさない見込みがあること
- 海洋環境の保全に支障を及ぼすおそれがないこと(2026年4月の改正で追加)
- 漁港や港湾の区域など、他の法律の区域と重ならないこと
区域が決まると、両大臣は公募占用指針を定めます。公募のルールブックにあたるもので、売電価格の上限(供給価格上限額)や評価の基準が書かれます。事業者は公募占用計画を出して競います。計画には、売電価格、工事の時期、使う港、撤去の方法、資金計画などを書きます。
選ばれた事業者は、海域を最長30年使う許可を受けられます。この30年には、建設と撤去の期間も含まれます。評価の配点は2026年6月に改訂され、価格と事業の実現性が120点ずつの同じ重みになりました。価格の下げ過ぎに歯止めをかける「想定供給価格幅」も入っています。
👉 日本の洋上風力公募ルールが改訂(2026年6月):価格フロア、事業実現性の同等配点、スケジュール柔軟化

図1:促進区域の指定から事業者の選定までの流れ(領海・内水)
有望区域で協議会を開き、促進区域に指定してから公募に進みます。
出典:資源エネルギー庁「洋上風力発電関連制度」
促進区域の前には段階があります。有望区域は、条件が整えば促進区域に進みうるとされた海域です。国、自治体、漁業者などで協議会を開き、指定に向けて話をまとめます。その前の準備区域は、情報を集めている段階の海域です。
EEZの手続き:募集区域、仮許可、協議会、許可の4段階
EEZには、領海と同じ公募の仕組みが使われていません。改正法は第4章で、別の手続きを定めました。
- 募集区域の指定:経済産業大臣が、EEZの中から設置者を募る区域を指定します。同時に、売電価格の上限や出力の基準、申請の受付期間を決めます。
- 仮許可:事業者は、設置計画の案を添えて申請します。両大臣が基準に照らして審査し、仮の地位を与えます。仮許可の有効期間は5年以内です。
- 協議会:仮許可を出した区域ごとに、国、仮許可事業者、漁業団体などで協議会をつくります。協議で決まったことに合わせて、事業者は計画の案を直します。
- 許可:最後に設置の許可を申請します。港、系統、協議会での合意との整合、航路、漁業、事業の確実さの6つの基準に合えば許可されます。
EEZで最も大きく変わるのは、事業者の選び方です。申請した区域がほかの申請と重ならなければ、基準を満たすかどうかを審査します。区域が重なったときに限り、「最も適切な」計画を比べて選びます。領海の公募は、1つの区域に複数の事業者が応募し、点数で1者を選ぶ仕組みです。EEZでは、競争が起きるかどうかが申請の重なり方で決まります。
確認する順番も変わります。促進区域では、港や系統、漁業との関係を、区域を指定する前に国が確かめます。EEZの募集区域の指定基準は、自然条件、漁業への明らかな支障がないこと、海洋環境の3つです。港と系統、航路の確認は、最後の許可の段階に回ります。つまりEEZでは、仮許可を受けた後の最長5年の間に、港と系統の確保に事業者自身が取り組むことになります。
| 項目 | 領海・内水(促進区域) | EEZ(募集区域) |
|---|---|---|
| 区域を決める人 | 経済産業大臣と国土交通大臣 | 経済産業大臣 |
| 事業者の選び方 | 公募で計画を採点し、1者を選ぶ | 申請を審査して仮許可。区域が重なれば比較 |
| 港・系統の確認 | 区域の指定前(国) | 許可の段階(事業者の計画を審査) |
| 期間 | 海域の占用は最長30年 | 仮許可は5年以内。許可の期間は両大臣が定める |
2026年10月時点で、EEZの募集区域が指定されたという公表は、DeepWindが確認した範囲では見当たりません。最初の募集区域でどの価格上限が付くかが、この手続きが実際にどう動くかを見る最初の材料になります。EEZの深い海で計画されている浮体式の実証については、別の記事で扱っています。
👉 浮体式の過酷海域実証:水深500m以上という要件と、その隣にある240MW
促進区域12海域、運転中は1件:法律が決めるのは「場所と事業者」まで
国土交通省の資料によると、2026年4月時点の区域は次のとおりです。促進区域が12海域、有望区域が9区域、準備区域が17区域あります。このほか、港湾区域の中の案件が6港、基地港湾(風車の部品を保管・組み立てる拠点港)が7港指定されています。
一方で、この法律の公募で選ばれて運転中の案件は、長崎県五島市沖の浮体式(16.8MW)だけです。運転開始は2026年1月でした。同じ第1ラウンドで選ばれた秋田・千葉沖の3海域は、2025年8月に三菱商事を中心とする事業者が撤退しました。合わせて約1,742MWで、3海域は再公募を待っています。
👉 第1ラウンド洋上風力は、なぜ撤退に至ったのか:METI公式分析から読み解く制度設計の限界と教訓
第2・第3ラウンドで選ばれた案件は、合計で約2.9GWあり、2030年までの運転開始を計画しています(環境省資料)。ただ、第3ラウンドの山形県遊佐町沖では、2026年7月に、構成企業のbpが撤退を検討していると報じられました。区域を指定し、事業者を選ぶところまでは、法律の手続きで前に進みます。その先で事業が成り立つかは、落札したときの売電価格と、その後の建設コストの差で決まります。
この差を埋める手当ても、法律の外側で進んでいます。第2・第3ラウンドのうち、市場価格への上乗せ(プレミアム)を受け取らない案件を「ゼロプレミアム案件」と呼びます。この案件に限り、長期脱炭素電源オークション(LTDA)に参加できる方向が固まり、2026年度の募集要綱案に入りました。LTDAは、新しい脱炭素電源の固定費を長期間まかなうための入札制度です。
👉 長期脱炭素電源オークション(LTDA)とは?仕組み・FIT/FIP比較・洋上風力への適用と第4回の条件
占用期間の30年には、建設と撤去の期間が含まれます。遊佐町沖(450MW)の公募占用計画では、占用は2028年4月から2055年12月の予定です。運転開始は2030年6月なので、売電できる期間は撤去を除いて最大25年半ほどです。融資の返済期間と売電の見通しは、この枠の内側に収める必要があります。政府は2026年2月、第2・第3ラウンドの占用許可について、更新を原則とする方針を示しました。ただし、最初に許可される期間が最長30年である点は変わっていません。
名前の変更よりも大きいのは、EEZで事業者の選び方が「採点で1者を選ぶ」から「申請を審査する」に変わる点です。
促進区域の公募では、価格の点数を取り合う競争が、第1ラウンドの低い落札価格につながりました。その反省から、2026年6月の改訂で価格の下げ過ぎを抑える幅が入りました。EEZの手続きは、区域が重ならない限り比較そのものが起きない設計です。価格の競り合いは起きにくくなる一方で、港や系統を確保できるかの見極めは、仮許可の後に事業者が背負います。
注目すべきは、最初の募集区域に付く価格上限と、申請がどれだけ重なるかです。上限が建設コストに見合う水準なら、深い海での案件づくりが前に進む材料になります。上限が低ければ、EEZは法律上開いても、申請が集まらない海域にとどまるおそれがあります。浮体式の量産体制や基地港湾の整備と、どの順番でかみ合うかも合わせて見る必要があります。
よくある質問:海洋再エネ整備法
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