風力発電のバードストライクが事業を動かす:北海道のオジロワシ、浜里の昼間停止と種の保存法の見直し

北海道の陸上風力で起きているオジロワシのバードストライクと、稼働停止・制度の見直しの関係

作成日:2026年10月31日|更新日:2026年10月31日

制度・政策

北海道で、風車に鳥がぶつかる事故が、事業そのものを動かし始めています。こうした事故をバードストライクと呼びます。ぶつかっているのは、国の天然記念物で絶滅のおそれもあるオジロワシです。北海道の海ワシ類の衝突は、2024年度に17件と過去最多になり、その約半分が1か所の風力発電所で起きました。幌延町の浜里ウインドファームです。浜里は対策を重ねても衝突を止められず、2025年と2026年の2年続けて昼間の運転を止めています。一方、いまの法律では、稼働後に追加の対策を取るかどうかは事業者の任意です。国は2026年7月、これを義務に近づける方向を示しました。北海道で陸上風力に関わる企業は、鳥による停止を発電量の前提に入れるかどうかを問われる段階にあります。

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Key Takeaways
1. 対策を重ねても、浜里の衝突は止まらなかった
目玉模様の表示と鳥を遠ざける装置、その後に鳥が近づくと風車を止める仕組みを入れても、衝突は続いたと報じられています。浜里は運転開始から2年足らずで昼間の全基停止に入り、2026年も2月から止めています。
2. 予測が外れた理由を、国の出先機関が自ら説明している
環境省の北海道地方環境事務所は、建設前の調査が主に巣をつくるつがいと渡りの個体を対象にしていたため、衝突の予測に不確実性があったとしています。アセスの数字は「どの鳥を数えたか」で変わります。
3. 追加の対策は、任意から義務へ動く可能性がある
環境省の検討会は、国が保護に取り組む種については、事業者に一定の義務を課し、守られなければ是正を求める仕組みを検討すべきだとしました。オジロワシはその対象の種です。まだ方向性の段階で、制度の形は決まっていません。

浜里ウインドファーム:対策を重ねても、2年続けて昼間の運転を止めた

浜里ウインドファームは、宗谷地方の幌延町にあります。ユーラスエナジーホールディングスの子会社が運営し、4.3MWの風車14基が2023年5月に運転を始めました。

時期 出来事 出典の種類
2023年5月 14基で運転開始 環境省
2023〜2024年度 海ワシ類の衝突11件(2024年度は8件) 環境省
2025年3月25日 全14基で昼間の運転を停止(日の出1時間前から日没まで) 報道
2025年7月12日 14基のうち13基で昼間の運転を再開 報道
2026年1月11日 オジロワシ1羽が衝突して死亡 保護団体
2026年2月4日 全14基で再び昼間の運転を停止 報道
2026年9月 各風車の羽根3枚のうち1枚を赤く塗る作業。2月からの昼間停止が続いていると報道 報道
出典:環境省北海道地方環境事務所 報道発表(2025年3月31日)、日経BP メガソーラービジネス(2025年4月7日)、北海道新聞(2025年7月11日・2026年2月5日・2026年9月8日)、日本自然保護協会(2026年2月3日)。整理はDeepWind。

最初の停止は、目玉模様の表示や鳥を遠ざける装置を入れても衝突が続いたためと報じられています。再開の後には、鳥が近づくと風車を自動で止める仕組みも入れたと報じられました。それでも2026年1月に衝突が起き、2月に再び全基の昼間停止に入っています。日本自然保護協会は、運転開始からの衝突をオジロワシ11羽・オオワシ1羽としています。9月には羽根を赤く塗る作業が報じられましたが、その効果はまだ分かりません。

昼間の停止は、風が吹いていても発電しない時間を、運営者が自ら選ぶということです。停止の期間や発電量への影響は公表されていません。ただ、9月の報道のとおりなら、2026年は少なくとも2月から9月まで、昼間の発電を手放していることになります。

北海道の17件のうち8件が1か所:予測はなぜ外れたのか

環境省の北海道地方環境事務所によると、浜里では運転開始から2025年3月までに、海ワシ類の衝突が11件確認されています。2023年度が3件、2024年度が8件です。北海道全体では2024年度に17件と過去最多で、その約半分がこの1か所で起きました。

同じ事務所は、予測の不確かさについても自ら説明しています。建設前の環境影響評価(発電所を建てる前に、環境への影響を事業者が調べて公表し、意見を受けて計画に反映する手続き)では、鳥の飛び方の調査が主に巣をつくるつがいと、渡りの途中の個体を対象にしていました。そのため衝突の予測に不確実性があり、影響を十分に評価できていなかった可能性がある、という内容です。

この説明は、アセスの数字が「どの鳥を数えたか」に左右されることを示しています。巣にいる鳥や渡る鳥を見ていても、餌場に集まる若い鳥などが別の動き方をすれば、実際の衝突は予測から離れます。1か所の予測のずれが、北海道全体の件数を押し上げるほどの大きさになりうる、ということでもあります(DeepWindの解釈)。

過去最多の17件でも、国は報告を求められない:種の保存法の見直し

環境省の検討会は2026年7月28日、種の保存法の見直しに向けた報告書を公表しました。種の保存法は、絶滅のおそれのある野生動植物を守るための法律です。報告書は、風力発電について現状の穴を具体的に書いています。

現状では、運転を始めた後に希少種への影響が分かっても、追加の対策を取るかどうかは事業者の任意です。法律には環境省が助言や指導をする規定がありますが、応じなくても罰則はありません。事業者から報告を求める規定もないため、環境省は現場の実態を把握する手段が限られています。浜里の停止と再開も、運営者の判断で行われてきました。

報告書が示した方向性は、国が保護増殖事業を行っている種を特に重く扱うことです。保護増殖事業は、国が数を回復させるために計画を立てて取り組んでいる種の事業で、オジロワシとオオワシは2005年から対象になっています。こうした種については、事業者に一定の義務を課し、守るべき事項を示し、不十分なら事業のやり方の是正を求める仕組みなどが考えられる、としました。

ここは検討の方向性であって、制度はまだ決まっていません。報告書自身も、事業者が先を見通せることと、実際に守れることに十分配慮して詳しく設計すべきだとしています。それでも、北海道の海ワシ類の生息地で風力を動かす事業者にとって、追加の対策が任意のままとは限らなくなりました。

洋上は、国が先にカメラを付けさせる

洋上風力では、国が別の形で先に手を打っています。環境省と経済産業省が2025年9月に公表したモニタリングガイドラインは、稼働中のバードストライクを事業者が調べる項目に入れました。衝突の危険が高い風車にカメラとマイクを付け、稼働後3年間、昼も夜も記録します。浮体式も同じです。生データは国に提供し、国が一元的に分析します。

保全の対策の例には、カメラと連動した運転の調整や、カットイン風速(風車が発電を始める風の強さ)の引き上げが挙がっています。環境省はカメラで衝突を特定する手法の実証を2027年度まで進めており、そのデータ解析の委託は12月17日に開札されます。国が区域を先に決める洋上の仕組みはセントラル方式の解説で整理しています。

Bankability Note

融資の審査で使う発電量の見通しは、主に風の強さの年ごとのばらつきから作ります。鳥による停止は、そこに入っていないことが多い項目です。浜里の例では、停止は運営者の判断で始まり、再開の時期も事前には決まっていませんでした。北海道では、系統の混雑による出力制御も見込まれています(北海道と東北に偏る出力制御)。稼働中の案件では、停止の条件と期間の上限が、事後調査の計画や運転の取り決めに書かれているかを確かめることを検討してよいでしょう。停止をその場の判断に任せたまま、発電量の見通しを固めることには慎重であるべきです。

次に確かめる3点

1. 浜里の昼間の運転が、どんな条件で戻るか。2025年は13基で再開し、2026年に再び止まりました。羽根の塗装や検知の仕組みの見直しが、再開の条件としてどう扱われるかが、ほかの施設の参考になります。

2. 種の保存法の改正案に、どこまで入るか。義務の対象になる種と区域、事業者に求める対策の中身、環境省が現場を把握する手段。報告書が挙げたこれらが、条文でどう決まるかを見る必要があります。

3. 国のカメラの実証から、何が分かるか。環境省の実証は2027年度まで続きます。カメラで衝突をどこまで特定できるかが分かれば、陸上でも「対策が効いたか」を確かめる方法の基準になりえます。

DeepWind View

北海道の陸上風力では、鳥のリスクがアセスの書類から、発電量の前提へ移りました。

浜里は、運転を始めてから予測と実績のずれが分かりました。対策を重ねても衝突は続き、運営者は昼間の発電を手放す形で応えています。環境事務所は、ずれの理由として、建設前の調査の対象が限られていた点を挙げました。これから問われるのは、対策を入れたかどうかより、対策が効くと示せるかどうかです。

北海道で陸上風力を開発する側は、海ワシ類の飛び方を、営巣と渡りだけでなく通年の利用まで広げて調べることを検討してよいでしょう。運転を始めてから止めるより、調べる段階で手間をかけるほうが、失うものは小さい可能性があります。一方、制度の行方を見ずに、任意の対策だけで計画を固めることには慎重であるべきです。種の保存法の見直しが条文になれば、守るべき事項が後から加わるかもしれません。

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