作成日:2026年9月17日|更新日:2026年9月17日
POLICY & REGULATION
送電線の増強工事が終わるのを待ってから運転を始めるか、混雑したときは出力を絞る条件で先につなぐか。東北の洋上風力では後者を選んだ分が、すでに国の系統見通しに数字として入っています。電力広域的運営推進機関(OCCTO)が2026年9月1日に公表した2031年度の見通しで、東北のローカル系統の出力制御(送りきれない分だけ発電設備の出力を絞ること)は、年間552.3GWhから1,823.5GWhと見込まれました。しかもその増加要因として、工事の完了前につないだ洋上風力が名指しされています。同じ見通しで出力制御が計上されたのは、10エリアのうち北海道と東北の2つだけです。発電量の前提が動けば、返済に回せる原資も動きます。系統の制約は、立地選びであると同時に事業計画の前提の話になりました。
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2031年度に風力の出力制御が計上されたのは北海道と東北だけで、東京・中部・関西・中国・九州は風力の欄がすべてダッシュ(計上なし)でした。同じ表で太陽光には数値が入っているため、記載漏れの可能性は低いと考えられます。ただしダッシュが示すのは「この前提とこの設備一覧では計上がない」ことまでです。
東北のローカル系統の出力制御電力量は、前年想定から367.9GWhまたは1,168.1GWh増えました。資料の脚注は「系統混雑時の出力制御を条件とした基幹系統増強工事完工前の連系(早期連系)による洋上風力等の増加に伴う混雑を含む」と明記しています。送電線の完成を待たずにつなぐ選択が、制御量に表れています。
2つのシナリオの違いは火力の燃料単価の時点だけです。それでも北海道の函館幹線では風力の制御量が約3倍動き、東北の下北AB線ではほとんど動かず、悪化する向きも逆でした。片方の数字を発電量の前提に直結させる使い方は成り立ちません。
止まる見込みが立っている場所は、思ったより狭い
まず、どこで止まる見込みなのかを見ます。今回は系統混雑(送電線に流したい電気が多すぎて送りきれない状態)が見込まれる送電線と変電所が、一般送配電事業者8社分にわたって設備ごとに並び、電源の種類別の制御量まで公表されました。
風力の行(⑤_WF)を横断して読むと、数値が入っているのは北海道と東北だけです。東京の56ブロック、中部の27、関西の6、中国の7、九州の8は、風力の欄がすべてダッシュでした。四国は3設備に計上がありますが、最大でも157MWh(0.056%)です。北陸と沖縄には、混雑が見込まれる設備そのものがありません。
この空欄には意味があります。同じ表で太陽光には計上があるからです(東京26ブロック、中部20、中国3、九州6)。風力の空欄は、計算の結果としてそうなっています。
ひとつ切り分けが要ります。ここでいう出力制御は、送電線が混んで送りきれないことによるものです。九州で現に起きている、需要より供給が多くなったときの出力制御とは別の仕組みです。本資料に九州の風力の計上がないことは、九州で出力制御が起きないことを意味しません。2つを混ぜて読むと、区域の比較を誤ります。
東北だけ桁が違う。その内訳に「工事完了前の連系」が入っている
東北の数字は、ほかのエリアと桁が違います。ローカル系統(基幹系統から需要地や発電所へ枝分かれする送電網)の年間出力制御電力量は552.3GWhと1,823.5GWhで、前年の想定から367.9GWhまたは1,168.1GWh増えました。全国合計が1,234.9GWhと2,255.5GWh(全国需要電力量比0.14%と0.26%)ですから、多いほうのケースでは全国の8割近くが東北のローカル系統に乗る計算です。増加の理由も、風力の導入拡大と明記されています。
2つの数字が並ぶのは、シナリオが2本あるためです。違いは火力の燃料単価をいつ公表の検証値で置いたかだけで、設備などの物理的な条件は同じです。
そして東北にだけ、脚注が付いています。「東北エリアは、系統混雑時の出力制御を条件とした基幹系統増強工事完工前の連系(早期連系)による洋上風力等の増加に伴う混雑を含む」。増強が終わるのを待たずに先につなぐという選択が、そのまま国の想定に組み込まれた形です。
ならされた年間値だけでなく、いちばん絞られる日の大きさも出ています。東北は基幹系統とローカル系統の合計で131.6万kWと203.9万kW。エリアの需要が最も大きい3日間の平均電力(H3需要)と比べると9.8%と15.2%にあたります。北海道はさらに高く、94.8万kWと85.9万kWで17.4%と15.8%です。つまり需要のピークに近い日でも、エリアの1割から2割弱に相当する出力が絞られる想定になっています。
融資の判断に効くのは、平均的な発電量よりも下振れしたときの発電量です。金融機関は、10年のうち9年はこれを上回るという水準(P90)で返済を試算し、返済がいちばん苦しい年に原資が返済額の何倍あるか(DSCR、元利金返済カバー率)を見ます。出力制御の見通しが1つのシナリオで3倍動く領域では、その差はP90の置き方に直接効きます。ここで示された数値はエリア全体の合計で、個別案件の発電量とは別ものです。案件側で見るべきは、自社の連系条件が早期連系にあたるのか、増強工事の完工時期が運転開始のいつに重なるのかという2点です。
前提を1つ入れ替えると、北海道は3倍動き、東北は動かない
ではこの数字は、どのくらい固いのでしょうか。設備ごとの内訳を見ると、シナリオの差の出方が地域で割れます。
東北では、下北AB線(0501)の風力制御量が197,087MWh(19.129%・2,244時間)と195,733MWh(19.032%・2,242時間)で、2つのシナリオがほぼ重なります。最上幹線(0600)では混雑電力量そのものが約3分の1に減っても、風力の制御量は89,008MWhと84,318MWhでほぼ変わりませんでした。動いたのは火力などを含む他の区分です。
北海道では逆の挙動が出ます。函館幹線(双葉SWS〜北長万部SWS、187kV)の風力制御量は、移行シナリオで109,608MWh(6.464%・907時間)、現行シナリオで36,454MWh(2.155%・288時間)と約3倍の開きがありました。悪化する向きも東北と逆で、東北は現行シナリオ、北海道は移行シナリオのほうが厳しく出ています。資料3のエリア値(北海道17.4%と15.8%)とも整合します。
読み取るべきは、前提を1つ替えただけで結果が地域ごとに別方向へ動くという事実です。片方の数値をそのまま発電量の前提に置き換える使い方は、それだけで成り立たなくなります。なお、参考資料の区分のうち調整電源などを含む合計は分解できないため、風力以外の内訳は断定しません。設備ごとの数値も、同じ制御量が複数の設備に重複して計上されうるため足し合わせていません。
いちばん厳しい数字は青森・下北に集まり、前提を替えても動かない
制御率がどこまで上がりうるかも見ておきます。東北の66kV設備で最も高いのは青森県側です。仲崎線が28.684%(2,868時間)、十和田西線が20.494%(2,245時間)、佐井線が10.193%でした。秋田側は能代東線の0.268%など計上がほとんどありませんが、ここでも計上の有無はリスクの有無と別の話です。
これらの66kV設備の数値は、2つのシナリオで完全に一致します。北海道の110kV以下も同じ挙動です。再計算されたのは上位の電圧階級だけとみられますが、資料に理由の記載はないため、そう見えるところまでにとどめます。
この違いは、案件の規模によって意味が変わります。ローカル系統につなぐ小規模な案件では、シナリオを選び直しても制御の見通しは1kWhも動きません。基幹系統につなぐ大型の洋上風力は、前提の置き方しだいで見通しが大きく振れる側にあります。振れ幅が大きいということは、契約で誰がその変動を負うのかを先に決めておく必要がある、ということでもあります。
21区域のうち15区域が、その2エリアに乗っている
最後に、この分布を公募が進む区域の地理に重ねます。促進区域12と有望区域9の計21区域を一般送配電事業者のエリアで分けると次のようになります。エリア名は送電網の区分で、都道府県とは一致しません。
| エリア | 促進・有望区域の数 | 風力の出力制御の計上 | 該当区域 |
|---|---|---|---|
| 北海道 | 5 | あり | 松前、檜山、石狩、岩宇・南後志、島牧 |
| 東北 | 10 | あり | 秋田県内4区域と秋田市、青森(日本海の南北)、遊佐、酒田、村上・胎内 |
| 東京 | 3 | 計上なし | 銚子、いすみ、九十九里(いずれも千葉県) |
| 九州 | 3 | 計上なし | 五島、西海市江島、響灘 |
21区域のうち15区域が、風力の出力制御が計上された2エリアに含まれます。系統の制約が、日本の洋上風力の主力地帯にそのまま乗っている形です。どの区域が有利かという評価には踏み込みません。エリアの合計値は案件の発電量とは別もので、区域ごとの連系条件も公表されていないためです。
系統混雑は、全国一律に差し引く割引ではありません。個別の連系条件に紐づく、地域ごとの条件です。
多くの事業計画は、出力制御を全国共通の割引として一律に差し引いてきました。2031年度の見通しは、その置き方を支えません。計上があるのは2エリアで、そのうち東北では、増強工事の完了前につないだ洋上風力が増加要因として名指しされています。
ただし、地域別の数値をそのまま案件から差し引くこともできません。示されているのはエリアの合計で、案件ごとの値はここからは出ないためです。使えるのは振れ幅です。北海道の函館幹線では約3倍、東北の下北AB線ではほぼ不変でした。この差が、感度分析で見るべき範囲を示しています。
次に確かめるべきは、増強工事の完工時期と自社の連系条件の噛み合いです。早期連系なら運転開始は早まり、その間の制御を条件として受け入れます。判断は、収入の前提をどこまで保守的に置けるかで決まります。
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