洋上風力「有望区域」の投資採算性:ラウンド4候補をLCOE・IRRで分析(2026年)

promising zones renewable sea act IRR LCOE

作成日:2025年6月13日|更新日:2026年7月27日

更新のお知らせ(2026年7月)

本記事の試算は2025年6月公開時の旧コストモデル(WACC6.5%・運転25年・売電単価18円/kWh)に基づくものです。現在、促進区域の分析と同じ最新モデル(実質WACC4%・運転30年・売電単価30円/kWh)による再算定を進めており、近日中に全面更新します。それまでの間、本記事の数値は当時の前提による相対比較の参考としてのみご覧ください。

日本における洋上風力発電は、再生可能エネルギーの主力電源化に向けて期待が高まる中、その導入を加速するための制度整備が重要なカギを握っています。特に、2018年に施行された「再エネ海域利用法(海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律)」は、洋上風力の導入にとって制度的な基盤を築く重要な法律です。

再エネ海域利用法について知りたい方はこちらから

本記事では2025年1月時点で再エネ海域利用法における「有望区域」に指定されている9区域について、下記4項目について推定し、投資採算性の観点から各区域の競争力を評価していきます。次回の公募となるラウンド4に選ばれるのはどの区域になるでしょうか?

  • CAPEX(資本費)・OPEX(運用費)
  • AEP(年間発電量)
  • IRR(内部収益率)
  • LCOE(均等化発電コスト)

本記事では特定の視点からコストを掘り下げますが、洋上風力全体のコスト構造や経済性を包括的に理解したい方は、以下のまとめ記事をご覧ください:
👉 洋上風力のコスト構造と経済性の全体像

※本記事は、執筆時点のコストモデルおよび前提条件に基づく参考分析です。 最新のコスト前提および相対評価については、以下のPillar記事を参照してください。
👉 LCOE・IRRから読み解く日本の洋上風力「促進区域」エリアの収益性比較

1. 有望区域と発電容量

Status of auctions for Japan offshore wind

2025年1月時点でMETIより公表されている、再エネ海域利用法における「有望区域」に指定されている全9区域想定される発電容量は下表のとおりです。

有望区域発電容量(MW)
北海道石狩市沖910~1140
北海道岩宇・南後志地区沖560~705
北海道島牧沖440~555
北海道檜山沖910~1140
北海道松前沖250~315
青森県沖日本海(北側)300
山形県酒田市沖 500
千葉県いすみ市沖400
千葉県九十九里沖410
出典:経済産業省資源エネルギー庁公開資料より

北海道地域の発電容量の下限値および上限値は、風車機種の発電容量(10MW or 15MW)による違いとみられます。

Hokkaido promising area capacity
出典:経済産業省資源エネルギー庁公開資料より

【2026年7月時点の補足】上記の表は2025年1月時点の指定状況です。その後、北海道檜山沖と松前沖は有望区域から「促進区域」へ移行し(第4ラウンドの候補)、新たに秋田県秋田市沖・福岡県響灘沖が加わって、現在の有望区域は9区域となっています。促進区域側の事業性比較は次の分析をご覧ください。

👉 LCOE・IRRから読み解く日本の洋上風力「促進区域」12エリアの事業性比較(2026年更新)

2. CAPEX・OPEX推定

再エネ海域利用法における「有望区域」に指定されている9区域について、資本支出(CAPEX)運用支出(OPEX)を、2024年10月のNEDO洋上風力発電コストモデルを参照に算出しました。北海道地域は15MW機の採用を前提(発電容量は上限値)とし、その他の地域は10MW機を採用前提としました。

有望区域発電容量(MW)風車基数CAPEX(億円)OPEX(億円)
北海道石狩市沖114015MW x 76基469781
北海道岩宇・南後志地区沖70515MW x 47基290550
北海道島牧沖55515MW x 37基228739
北海道檜山沖114015MW x 76基469781
北海道松前沖31515MW x 21基129822
青森県沖日本海(北側)30010MW x 30基123621
山形県酒田市沖 50010MW x 50基206035
千葉県いすみ市沖40010MW x 40基164828
千葉県九十九里沖41010MW x 41基168929
出典:2024年10月のNEDO洋上風力発電コストモデルを参照に算出

3. 年間発電量(AEP)推定

再エネ海域利用法における「有望区域」に指定されている9区域について、定格出力より推定したパワーカーブ(15MW、10MW)とNEDOのNeoWinsの風況データを用いて年間発電量(AEP)を算定しました。

有望区域パワーカーブ定格出力設備利用率(%)
(損失非考慮)
設備利用率(%)
(損失考慮)
年間発電量(kWh)
北海道石狩市沖15MW39.6431.713166887168
北海道岩宇・南後志地区沖15MW34.7327.781715884272
北海道島牧沖15MW40.2432.191565110656
北海道檜山沖15MW41.5233.223317082624
北海道松前沖15MW44.0035.20971308800
青森県沖日本海(北側)10MW42.7234.18898145280
山形県酒田市沖 10MW37.8830.301327315200
千葉県いすみ市沖10MW38.3930.711076148480
千葉県九十九里沖10MW33.6926.95968008032

4. IRR(内部収益率)とLCOE(均等化発電コスト)

再エネ海域利用法における「有望区域」に指定されている9区域について、一般的な投資判断の指標とされるIRR(内部収益率)LCOE(均等化発電コスト)を算定しました。なお、下記条件を仮定しています。

  • 風力発電の運転期間=25年間
  • 供給価格=18円/kWh
  • WACC=6.5%
有望区域IRR (%)
内部収益率
LCOE(円/kWh)
均等化発電コスト
北海道石狩市沖9.2914.70
北海道岩宇・南後志地区沖7.4316.78
北海道島牧沖9.5114.48
北海道檜山沖9.9814.04
北海道松前沖10.8713.24
青森県沖日本海(北側)10.4113.64
山形県酒田市沖 8.6415.38
千葉県いすみ市沖8.8315.18
千葉県九十九里沖7.0317.30
出典:DeepWindにて独自に算定

まとめ

2025年1月時点で「再エネ海域利用法」に基づき有望な区域として指定された9区域について、IRR(内部収益率)とLCOE(均等化発電原価)の観点から、投資採算性を評価しました。

旧モデルの試算では、風況と立地条件に恵まれた北海道・青森の区域が相対的に優位という結果でした。ただし、この序列は当時の前提(WACC6.5%・売電18円/kWh)によるものです。最新モデルでは前提そのものが変わるため、区域ごとの再算定結果は近日中の全面更新でお伝えします。

💡 コスト全体の構造と経済性を詳しく知りたい方は
洋上風力のコスト構造と経済性:完全ガイド をご覧ください。
CAPEX・OPEX・LCOEなど、洋上風力コストの全体像を1ページで解説しています。

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