作成日:2026年10月13日|更新日:2026年10月13日
MARKET DYNAMICS
世界の洋上風車の累計で、中国メーカー4社は約42%を占めています。ところが日本の洋上風力発電所の認証登録簿を見ると、中国メーカーの風車は富山県入善町沖の3基、合わせて9MWだけです。日本の洋上風力は、欧米の数社から風車を買っています。これから建つ15MW級では、候補として名前が挙がるのは2社です。第4ラウンドや再公募の案件では、風車を手配する事業者も、工事を請け負うEPCも、融資を判断する金融機関も、同じ問いを抱えます。「どのメーカーから、いつ、いくらで買えるか」が、案件の成否を左右し始めています。
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世界の洋上風車の累計では中国4社が約42%を占めます。日本の洋上風力発電所の認証登録簿6件のうち、中国メーカーの風車を使うのは入善の3基だけです。
GE Vernovaが超大型機の開発を止めたため、村上胎内は18MW機から15MW機に切り替え、洋上工事を1年遅らせたと報じられています。国内に納入実績があり、候補として名前が挙がるのはVestasとSiemens Gamesaです。
入善の3基は、認証を通り商用運転を続けています。ただし規模は3MW級です。15MW級の台風下での実績、国内の保守体制、公募での評価、金融機関の見方は、案件ごとに確かめる必要があります。
世界の洋上で約4割を占める中国勢、日本の洋上では9MW
日本風力発電協会(JWPA)は、2026年9月のWIND EXPOで、世界風力会議(GWEC)のデータをもとに風車メーカーのシェアを示しました。2025年末までに世界で運転を始めた洋上風車の累計では、首位はSiemens Gamesaの30.81%です。2位は中国の明陽智能(Mingyang)で13.75%、3位も中国の上海電気風電(Sewind)で13.51%でした。Goldwind(8.78%)とEnvision(6.25%)を加えると、中国メーカー4社で約42%になります。
日本の洋上を見ると、姿がまったく違います。日本海事協会(ClassNK)は、洋上風力発電所が設計の基準や現地の条件を満たすかを確かめて認証しています。その登録簿(2026年9月30日時点)に載る洋上風力発電所は6件です。下の表は、世界の上位メーカーと、登録簿で使われている風車を並べたものです。
| メーカー | 世界の洋上累計シェア(2025年末) | ClassNK登録簿の日本の洋上風力発電所 |
|---|---|---|
| Siemens Gamesa(独・西) | 30.81% | 石狩湾新港(8MW機×14基) |
| Mingyang(中国) | 13.75% | 入善(3MW機×3基) |
| Sewind(中国) | 13.51% | 記載なし |
| Vestas(デンマーク) | 12.97% | 秋田港・能代港(4.2MW機×33基)、北九州響灘(9.5MW機×25基) |
| Goldwind(中国) | 8.78% | 記載なし |
| Envision(中国) | 6.25% | 記載なし |
中国メーカーの風車は、入善の3基だけです。世界で2位のメーカーが、日本の洋上では9MWにとどまっています。登録簿は、ClassNKの認証を受けた発電所の一覧です。日本のすべての洋上風車を網羅しているとは限りません。
日本の風車は欧米4社で76%、2025年の新設はほぼ3社
陸上を含めた日本全体でも、傾向は同じです。JWPAの集計では、2025年末までに運転を始めた日本の風車は6,434MWです。GE系が23%、Siemens系が20%、Vestas系が17%、Enerconが16%で、欧米4社が76%を占めます。日立製作所・富士重工業(9%)、三菱重工業(5%)、日本製鋼所(4%)の国内勢が続きます。中国メーカーは、名前の出る区分に入っていません。「その他」の3%に何が含まれるかは、資料からはわかりません。
2025年の1年間に運転を始めた625MWは、さらに偏っています。Siemens Gamesaが41%、GEが38%、Enerconが20%で、この3社でほぼすべてです。JWPAは、日本は毎年の案件の数が少ないため、どのメーカーが納めたかでシェアが大きく動く、と注記しています。
15MW級の候補は、実質2社になった
これから建つ大型の洋上風力では、選べるメーカーの数がさらに減っています。第2ラウンドの新潟県村上市・胎内市沖では、事業会社が当初、GE Vernovaの18MW機を38基(684MW)並べる計画でした。報道によると、GE Vernovaは超大型風車の開発を止めました。これを受けて事業会社は、2026年1月20日の法定協議会で、15MW機46基に切り替えると説明しています。洋上工事の開始も、2027年4月から2028年4月へ1年遅らせました。
新しい風車のメーカーは公表されていません。ウインドジャーナルは、国内の案件で実績のあるVestasかSiemens Gamesaのどちらかとみています。山形県遊佐町沖(450MW)の公募占用計画も、Siemens Gamesaの15MW機30基を前提にしています。日本で15MW級の風車はまだ1基も運転していません。国内に風車を納めた実績があり、15MW級の機種を持つメーカーとして名前が挙がるのは、いまのところこの2社です。
そのうちVestasは、日本での組立を受注次第としています。2026年7月10日、経産省のGXサプライチェーン構築支援事業で、洋上風力の設備を対象にした枠の採択先が公表されました。この回に採択されたのはVestas Japanの1社だけで、北九州でナセル(発電機などを収めた、タワー上部の箱)の最終組立を行う計画です。Vestasは実施の条件として、市場の拡大と、日本の案件での受注を挙げています。メーカーは注文が見えてから工場を動かし、事業者は工場が見えてから計画を固めます。お互いが相手を待つ形になっています。
風車の機種変更は、工期と収益の前提を同時に動かします。報道によると、村上胎内の事業会社は全体の日程を見直しています。風車の仕様とメーカーの変更に加え、長期脱炭素電源オークションに参加する可能性も含めた見直しです。運転開始が遅れれば、売電収入が入り始める時期も後ろにずれます。金融機関が見る返済の余裕(DSCR、毎年の返済額に対して返済の原資が何倍あるか)は、建設中の遅れと費用の増加に弱い指標です。供給元が2社しかないと、メーカーの製造枠の取り合いが日程の遅れとして案件に跳ね返りやすくなります(DeepWindの分析)。
入善の3基からわかること、わからないこと
入善洋上風力発電所は、ウェンティ・ジャパン、JFEエンジニアリング、北陸電力が出資する入善マリンウィンドが建てました。Mingyangの3MW級の風車3基を据え、出力を最大7,495kWに抑えて、2023年9月22日に運転を始めています。電気は全量を固定価格買取制度(FIT)で売っています。ClassNKのウィンドファーム認証は2022年11月18日付です。現地の条件、設計の基準、全体の荷重、風車、支持構造物の5つの評価にも、それぞれ証明書が出ています。
ここからわかるのは、中国メーカーの風車でも、日本の洋上で認証を取り、商用で運転できるという事実です。一方で、入善の風車は3MW級で、いま日本の大型案件が前提にしている15MW級の5分の1の大きさです。大型機の台風下での実績、日本国内での部品と保守の体制、大型案件を支える製造の枠は、入善の事例からは判断できません。
Mingyangは同じWIND EXPOの資料で、16MWの浮体式(緊張係留式)を紹介しています。水深136mの海域に据え、2026年8月に系統につながった機体です。風力17級の台風を想定して設計し、それ以前の浮体式の機体は2024年9月の台風11号を経験した、という説明です。これらは企業自身の説明で、第三者による検証の結果はまだ確認できていません。
中国メーカーを検討するなら、確かめる5つのこと
DeepWindは、特定のメーカーの採用を勧めることも退けることもしません。ただ、中国メーカーを選択肢に入れるなら、少なくとも次の5点は先に確かめておく必要があります。
- 型式の認証と現地の実績:検討する機種が、ClassNKなどの認証をどこまで取っているか。台風と冬の日本海の風を受ける海域で、同じ大きさの機種がどれだけ運転しているか。
- 国内の保守体制:保証期間(メーカーが性能を保証する期間)のあいだ、保守はメーカーが担うのが一般的です。日本に部品の在庫と技術者を置けるかで、故障したときに止まる時間が変わります。
- 公募での評価:新しい公募制度は、事業の実現性や国内の供給網を重く見る方向に配点を見直しています。DeepWindが確認した範囲では、評価の基準にメーカーの国籍を直接の項目にした記載は見当たりませんでした。ただし、実現性の採点で調達先がどう評価されるかは、公募ごとの指針で確かめる必要があります。
- 金融機関と保険会社の見方:融資と保険の条件は、メーカーの実績と財務の強さ、保証の中身に左右されます。日本での運転実績が少ない機種ほど、条件の交渉に時間がかかるおそれがあります。
- 政策の変化:発電設備のサイバーセキュリティや経済安全保障をめぐる議論は、国内外で続いています。日本で風車の調達に関わる新しいルールが出るかどうかは、現時点では確定していません。
👉 GXサプライチェーン構築支援事業とは?洋上風力サプライチェーン国産化の製造能力目標と現実
日本の洋上風力にとって、風車の問題はどの国のメーカーかより先に、選べる数の少なさにあります。
世界の洋上風車の約4割を造る中国勢は、日本ではほとんど使われていません。その結果、日本の大型案件は、国内に納入実績のある欧米の2社に集まっています。供給元が2社しかない市場では、価格も納期も買い手の側では決めにくくなります。村上胎内で起きたのは、1社が大型機から手を引いただけで、第2ラウンドの案件の機種と工期が組み直しになるという出来事でした。
第4ラウンドや再公募に向けて次に見るべきは、2つの動きです。1つは、VestasとSiemens Gamesaが日本向けの製造枠をどこまで確保するか。北九州での組立が実際に動くかは、その目安になります。もう1つは、公募と融資の場で、実績の少ないメーカーがどう扱われるかです。中国メーカーが日本で増えるかどうかは、技術より先に、この2つの場でどう評価されるかで決まりそうです。
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DeepWind Weeklyは、日本の洋上風力市場を毎週お届けします。発表された内容そのものより、その先で何が起きるかを追います。工事は実際に動くか、コストは合うか、事業として成り立つか、部材と人手は足りるか、制度は何を変えるか。この5点から読み解きます。
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