はじめに
日本は2050年カーボンニュートラルを掲げ、洋上風力発電をエネルギー転換の柱と位置づけています。政府は2030年までに10GW、2040年までに30〜45GWの導入を目標としており、これらの目標を実現するために、法制度、支援スキーム、公募制度、認証制度など多層的な政策パッケージが進められています。
🔗 日本の洋上風力発電:2030年・2040年目標と最新動向

1. 国家戦略と長期的エネルギー政策の方向性
洋上風力の導入は、単なる発電容量の増加にとどまらず、日本のエネルギー政策の根幹を支える戦略的施策です。特に、「エネルギー基本計画」や「地球温暖化対策計画」などの中長期戦略の中で、洋上風力の役割は年々大きくなっています。
🔗 エネルギー基本計画とは?日本のエネルギー政策の羅針盤を読み解く

2. 政策実行を支える制度設計:中央集権型アプローチの意義
日本では、政府主導の「中央集権型アプローチ」が導入され、促進区域の指定から公募、事業者選定まで一貫して管理されています。これにより、プロジェクトの透明性やスケジュールの確実性が向上し、投資促進に寄与しています。
🔗 日本の洋上風力発電を加速するセントラル方式:効率化と競争力強化への道
3. 法的枠組みと促進区域制度の仕組み
洋上風力の海域利用は、「再エネ海域利用法(通称:促進区域制度)」に基づき進められています。経産省・国交省が協議会を通じて海域を指定し、選定された事業者に対して独占的な使用権が与えられます。
公募プロセスや審査の流れを体系的に解説した記事はこちら:

さらに、2025年の法改正では、排他的経済水域(EEZ)までの拡張が認められ、開発ポテンシャルが大幅に広がりました。
🔗 【2025年法改正対応】再エネ海域→EEZ拡大!洋上風力発電の要点

4. 公募評価の仕組みとスコアリング制度
促進区域における公募では、供給価格とプロジェクトの実現可能性の両面から評価されます。特に、実現可能性の評価では、実施体制・資金計画・撤去計画・地域協調など、複数のサブ項目が細かく採点されます。
🔗 再エネ海域利用法に基づく洋上風力の公募評価基準:スコアリング項目と配点を徹底解説
2025年11月19日に経済産業省資源エネルギー庁および国土交通省港湾局が発表した「洋上風力事業を完遂させるための新たな公募制度」の資料内容をもとに、制度見直しの背景や具体的な改革ポイントについて詳しく解説します。
🔗 日本洋上風力新制度:日本が公募制度を抜本見直し、事業完遂重視へ
5. 政府主導の価格支援とその課題
価格面では、従来の固定価格買取制度(FIT)に加え、最近では市場連動型のFIP制度が導入されつつあります。FIPは市場統合を促す一方、価格変動リスクの増加により、投資家や事業者のリスク管理が課題となっています。
🔗 FITとFIP制度とは?洋上風力拡大を支える2つの仕組みを解説

日本のエネルギー政策の中心に、いま新たに「長期脱炭素電源オークション(LTDA)」が据えられつつあります。脱炭素電源の建設には数百億〜数千億円規模の初期投資が必要ですが、電力市場の価格変動は激しく、従来制度のFITやFIPだけでは投資の確実性が十分とは言えません。
こうした課題を踏まえ、政府は固定費(CAPEX+固定的OPEX)を20年間で確実に回収できる新制度として、長期脱炭素電源オークションを導入しました。本記事では、最新の公表資料にもとづき、制度の仕組み、対象電源、洋上風力ラウンドへの適用、発電事業者・需要家への影響、PPAとの関係までを総合的に整理します。
🔗 長期脱炭素電源オークションとは何か:仕組み・FIT/FIPとの違い・洋上風力への影響を徹底解説
6. 認証・規制対応と技術的課題
洋上風力は洋上という特殊な環境下で稼働するため、建設・運転・撤去に至るまで厳格な安全基準と認証制度が適用されます。特に浮体式では、構造安全性や係留系、撤去方法に関する規制課題が複雑化しています。
🔗 第4回:浮体式洋上風力の制度・認証と課題(認証・撤去・法的リスクまで)
7. 政策面の最新動向とリスクへの備え
政策は進化と共に新たなリスクも生み出します。FIT制度の見直し、長期入札停止、送電網制約など、政策的・制度的なリスクは常に事業の成否を左右します。こうしたリスクに対し、政府は逐次制度改正を行いながら対応を進めています。
🔗 日本の洋上風力政策:迅速な展開とリスク対応に向けた新たな枠組み
2025年11月、経済産業省・国土交通省は「洋上風力事業を完遂させるための事業環境整備」を公表しました。第1ラウンドで撤退事例が発生したことを受け、政府は今後のラウンド、特に第2・第3ラウンドの事業を確実に進めるための制度パッケージをまとめたものです。
本記事では、政府資料の論点を整理しつつ、DeepWindとして「実務・投資・戦略」の視点から今回の施策が日本の洋上風力にどのような変化をもたらすのかを解説します
🔗 日本の洋上風力政策が大転換:第1ラウンド撤退を踏まえた7つの事業環境整備を徹底解説
日本の洋上風力制度が実際のプロジェクト完遂にどのような影響を与えたのかを理解するうえで、第1ラウンド案件の撤退事例は重要な示唆を与えます。METIが公表した公式分析をもとに、第1ラウンド洋上風力がなぜ撤退に至ったのか、価格評価や事業実現性評価の構造的課題を整理した記事はこちらです。
2025年11〜12月にかけて、日本の洋上風力制度は大きな転換点を迎えました。公募制度の見直しと、選定後の事業を支える環境整備策が同時に示され、価格競争中心だった制度は「事業を最後まで成立させる力」を重視する方向へと舵を切っています。本記事では、公募制度と事業環境整備を切り分けず、一体の政策パッケージとして整理し、今回の制度見直しが示す政策側の問題意識と今後の市場への影響を読み解きます。
🔗 日本の洋上風力制度は何が変わったのか(2025年11–12月)
まとめ:日本の洋上風力政策はどこへ向かうのか
日本の洋上風力政策は、制度の複雑さと透明性の両立を目指し、進化を続けています。導入目標を実現するには、法律・制度・支援策の連動だけでなく、現場レベルでの理解と対応も不可欠です。今後も、制度設計の動向や規制対応の進展に注目が集まるでしょう。



