はじめに
洋上風力プロジェクトの採算性を評価するうえで、CAPEX・OPEX・LCOE・IRR といったコスト関連指標は極めて重要です。
しかし、日本の促進区域における具体的なコスト情報は、公開資料が限られており、投資家や事業者にとって判断材料が不足しているのが現状です。
本記事では、秋⽥県由利本荘市沖洋上風力を対象に、代表地点の立地条件(離岸距離・水深・港湾距離)から、CAPEX・OPEX・LCOE・IRRを推定しました。なお、推定にはNEDOコストモデルや国際的なベンチマーク等を参照し、DeepWind独自のコストモデルを使用しています。
あくまで独自推定値ではありますが、区域ごとの特徴や相対的な比較を行う上での参考となる情報を提供します。
本稿では、事業進捗や制度的な背景ではなく、コスト構造の観点から整理します。秋⽥県由利本荘市沖洋上風力プロジェクトの概要を知りたい方は以下の記事をご覧ください。
👉 秋⽥県由利本荘市沖洋上風力発電プロジェクト
| 改訂履歴 |
| 2025年11月:CAPEX&OPEXモデルおよびモデル価格更新による各種結果の修正 |
1. 区域概要
- 区域名: 秋田県由利本荘市沖
- 所在地: 秋田県・南西沖
- 最大想定容量: 840 MW
- 指定状況: 促進区域
2. 推定条件(代表値)
本稿では促進区域のポリゴン座標に基づき、区域中央を代表点に設定しました。水深・距離条件はNeoWinsのデータを基に推定しています。

| 項目 | 推定値 | 備考 |
|---|---|---|
| 水深 (m) | 約19 m | 代表点の水深 |
| 離岸距離 (km) | 約2.0 km | 代表点から陸揚げ点まで最短距離 |
| 港湾距離 (km) | 約7 km | 代表点から想定O&M港まで直線距離 |
3. CAPEX / OPEX 推定
CAPEX/OPEXは、JWPAの事業者アンケート結果および国際的なベンチマーク等を参照し、DeepWind 独自に算定しました。
| 基礎タイプ | 推定CAPEX | 推定OPEX |
|---|---|---|
| モノパイル基礎 | 約6930 億円 | 約116 億円/年 |

4. LCOE 推定
LCOEは2024年10月のNEDO洋上風力発電コストモデルおよびNeoWinsデータを参照にDeepWind 独自に算定しました。
| 基礎タイプ | 設備利用率(Gross) | 割引率 | 推定LCOE |
|---|---|---|---|
| モノパイル基礎 | 38% | 3.0% | 22.5 円/kWh |
5. IRR 推定
| 価格条件 | 推定IRR | 売電価格 | 運転期間(想定) |
|---|---|---|---|
| モデル価格 (市場取引やコーポレートPPA活用) | 4.3 % | 25 円/kWh | 25年 |
6. 収益性評価(DeepWind独自)
| 評価軸 | スコア(★1–5) | 評価結果 |
|---|---|---|
| 収益性(モデル価格) | ★★★ | 普通 |
| 総合評価 | Bランク | 採算ラインに近く、コスト削減・制度支援が必要。 |
まとめ
秋田県由利本荘市沖の促進区域は、水深や港湾距離など立地条件に恵まれていますが、モデル価格を前提とすると現状では採算ラインに近い状況です。市場取引やコーポレートPPAを活用した場合にはIRRの改善が見込めるため、支援策やコスト削減の進展が事業成立のカギとなります。
DeepWindでは、こうしたコスト構造や収益性の分析を通じて、投資家・事業者の意思決定に資する実践的な情報を今後も提供していきます。
その他促進区域のCAPEX・OPEX・LCOE・IRRと比較したい場合は、こちらのまとめ記事もぜひご覧ください。
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