日本は、洋上風力発電の導入を加速させており、その象徴的なプロジェクトの一つが青森つがる洋上風力発電プロジェクトです。本事業は、日本政府が進める第3回洋上風力発電入札(通称:ラウンド3)の一環として実施され、2030年までに10GW、2040年までに30~45GWの洋上風力発電容量を確保するという国家目標達成に向けた重要なステップとなります。
本プロジェクトの総発電容量は615MWに達し、着床式洋上風力発電として日本の電源構成の脱炭素化に大きく貢献するとともに、地域産業の発展や経済活性化を促進することが期待されています。この記事では、プロジェクトの詳細、スケジュール、推定されるCAPEX&OPEXについて詳しく解説します。
他の促進区域の動向もあわせて把握したい方は、全国の洋上風力プロジェクトまとめをご覧ください。
1. プロジェクト概要
| プロジェクト名 | 青森つがる洋上風力発電事業 |
| 開発事業者 | つがるオフショアエナジー共同体 |
| コンソーシアム | 株式会社JERA 株式会社グリーンパワーインベストメント 東北電力株式会社 |
| 設置場所 | 青森県津軽市沖 |
| 発電方式 | 着床式洋上風力発電 |
| 風車機種 | Siemens Gamesa Renewable Energy(SGRE)製 |
| 供給価格 | 3.0円/kWh |
| 発電容量 | 615MW(15MW × 41基) |
| 建設開始 | 2026年(陸上)、2028年(洋上) |
| 運転期間 | 2030年6月~2055年 |
2. 設置場所
2-1. 海域・地理的特徴
青森県西部、日本海に面する広大な海域(沖日本海・南側)。強い季節風が吹き付ける風況良好なエリア。水深は数十m程度と見込まれる。
2-2. 港湾インフラ・系統接続
周辺に大規模港湾が少なく、新規港湾インフラ整備が課題。建設・運営拠点は今後検討(例:能代港からの資機材搬送等)。東北電力の送電網に接続し本州側へ送電予定。

3. コンソーシアム構成員
株式会社JERA
- 日本最大の発電事業者
- 多数の発電所で長期にわたるO&M実績あり
- 台湾・欧州における海外洋上風力の豊富な事業経験
- 子会社Parkwindが欧州で持つ13年以上の洋上風力発電所O&M実績
株式会社グリーンパワーインベストメント
- 国内外で風力発電創業時から多数の開発、建設、O&M実績を持つ再エネ事業者
- 県内ウィンドファームつがるを通して、2009年から当該地域と連携
- 先行開発により本海域の地域関係者との対話・調整を推進し、信頼関係を構築済み
- 石狩湾新港洋上風力発電所の完工による国内の数少ない洋上風力経験と実績
東北電力株式会社
- 東北地方で70年以上にわたり発電所の建設、O&Mの実績を持つ電力会社
- 東日本大震災や東北地方特有の自然災害時の緊急対応等の豊富な経験
- 地域におけるNo.1の電力小売事業者であり、再エネ電気の地産地消を実現
- 東北地方において長年の電力安定供給を通した地域との信頼関係を構築
4. 事業実施体制

5. プロジェクトスケジュール
5-1. 全体スケジュール
- 開発・設計フェーズ(2024年~2026年)
- 2024年12月:公共入札の受注
- 環境影響評価、風況・海象調査、海底地盤調査
- 地元協議・調整
- ウィンドファーム認証、工事計画届
- 建設フェーズ(2026~2030年)
- 2026年:陸上変電所と送電インフラの建設
- 2028年:洋上基礎とケーブルの設置
- 2029年:風車の組立と設置
- 運用・保守フェーズ(2030年~2055年)
- 風車の維持管理:SGRE、本SPC
- 運転管理(BOP):メンテナンス会社
- 撤去・再発電フェーズ(2055年以降)

5-2. EIA(環境影響評価)の進捗状況
| 都道府県 | 事業名称 | 事業者名 | 手続段階 | 事業規模 | 最終更新日 |
|---|---|---|---|---|---|
| 青森県 | (仮称)つがる洋上風力発電事業 | 株式会社グリーンパワーインベストメント | 方法書 | 発電所出力(発電端):最大60万kW、風力発電機の基数:定格出力15,000kW級を41基設置 | 2025年09月09日 |
| 青森県 | (仮称)青森県つがる沖南部洋上風力発電事業 | 株式会社JERA | 事業廃止 | 出力:最大60万kW、単機出力:9,500~15,000kW級、基数:最大63基(単機出力9,500kWの場合) | 2025年07月24日 |
| 青森県 | (仮称)青森県つがる市・鰺ヶ沢町沖洋上風力発電事業 | 青森南洋上風力開発合同会社 | 事業廃止 | 総出力:最大650,000kW、単機出力:14,000~18,000kW級を想定、基数:最大36~45基 | 2025年07月07日 |
| 青森県 | (仮称)青森沖洋上風力発電事業 | 津軽七里長浜洋上風力合同会社 | 事業廃止 | 総出力:最大600,000kW、基数:最大63基 | 2025年02月25日 |
| 青森県 | (仮称)青森西北沖(南側)洋上風力発電事業 | 青森西北沖洋上風力合同会社 | 事業廃止 | 総出力:最大600,000kW、単機出力:9,500~15,000kW程度、基数:40~64基 | 2025年02月25日 |
| 青森県 | (仮称)青森津軽南洋上風力発電事業 | 住友商事株式会社、東京電力リニューアブルパワー株式会社 | 事業廃止 | 総出力:67.5万kW(最大想定)、風力発電機の基数:定格出力15,000kW~20,000kW級を最大45基設置 | 2025年02月25日 |
| 青森県 | (仮称)青森県沖日本海(南側)洋上風力発電事業 | RWE Renewables Japan合同会社、三井物産株式会社、大阪ガス株式会社 | 配慮書 | 総出力:900,000kW(900MW)、基数:38~75基(単機出力:12,000~16,000kW級) | 2025年01月21日 |
| 青森県 | (仮称)青森西北沖洋上風力発電事業 | 青森西北沖洋上風力合同会社 | 方法書 | 50万kW (4,000〜9,500kW程度×最大125基) | 2019年04月25日 |
| 青森県 | (仮称)つがる西洋上風力発電事業 | 日本風力開発株式会社 | 方法書 | 最大100万kW (8,000kW級×最大125基もしくは4,000kW級×最大250基) | 2018年12月28日 |
6. CAPEX & OPEX 推定
洋上風力プロジェクトの採算性を評価するうえで、CAPEX・OPEX・LCOE・IRR といったコスト関連指標は極めて重要です。しかし、日本の促進区域における具体的なコスト情報は、公開資料が限られており、投資家や事業者にとって判断材料が不足しているのが現状です。
そこで代表地点の立地条件(離岸距離・水深・港湾距離)を基に、NEDOのコストモデルを用いてCAPEX・OPEX・LCOE・IRRを推定しました。
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まとめ
青森つがる洋上風力発電プロジェクトは、日本の再生可能エネルギー推進における重要なマイルストーンとなります。持続可能性、経済発展、技術革新に重点を置き、日本の洋上風力発電の拡大に向けた礎を築きます。
再エネ海域利用法における「促進区域」の一覧は、洋上風力促進区域12プロジェクト一覧 ― 再エネ海域利用法の最前線でご確認いただけます。
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