日本の浮体式にとって歴史的な一歩
日本の浮体式洋上風力産業は、歴史的な節目を迎えています。初めて日本の浮体式基礎技術が海外で実証されることになりました。2025年6月13日にリオグランデ・ド・スル州で発表された 「Aura Sul Wind Project」 は、JB Energy(Japan Blue Energy)がリードし「Raijin Float」 と 世界最大の洋上風力タービン(MySE18MWタービンが組み合わされます。これは、日本の技術が国際舞台へと踏み出す転換点です。
Aura Sul Wind Project:ブラジル洋上風力の新章
JB Energy(Japan Blue Energy)の LinkedIn発表によると、Aura Sul Wind Projectは ブラジル初の浮体式洋上風力のパイロットプロジェクトであり、世界有数の風況と強力な港湾インフラを背景に実施されます。
「Raijin Float」とは?
Raijin Floatは プレキャスト・プレストレストコンクリート を用いた設計で、深海 (>50m) に対応可能。JB Energyによれば、この技術により以下の効果が期待されています。
- 鋼製基礎と比べて CAPEXを最大50%削減
- 固定式基礎と比べて 設置コスト・期間を削減
- コンクリート構造により 建設時のCO₂排出を低減
収益化までの期間を短縮し、投資回収を加速する効果が見込まれます。

コンソーシアムメンバー
コンソーシアムには以下の企業・組織が参加します。
- JB Energy(日本) – コンソーシアムリーダー、Raijin Floatの提供
- リオグランデ・ド・スル連邦大学(ブラジル) – R&D、教育、人材育成
- Sindienergia-RS(ブラジル) – 制度支援とステークホルダー調整
- PORTOS RS(ブラジル) – 港湾インフラと物流支援
- MingYang Smart Energy(中国) – 世界最大18MWタービン供給
- Technomar Engenharia(ブラジル) – デジタルツインとリスク解析
- Blue Aspirations Brasil – 環境データ収集(LIDAR搭載ブイ)
- ABEEólica(ブラジル) – 業界支援と資金調達
今後は環境評価・設計・建設を経て、2030年以降の商業展開を目指します。
なぜ重要なのか:日本の浮体式が世界市場へ
1. 日本の浮体式技術、海外初進出
これまで日本の浮体式洋上風力は福島・北九州・長崎など国内実証に限られてきました。Aura Sul Wind Projectはその国際化の第一歩です。GWEC「Global Offshore Wind Report 2025」でも、浮体式は「次の成長フロンティア」とされ、日本は先行国の一つに位置づけられています。
2. 世界的競争の中での実証
欧州のセミサブや米国設計の浮体式と並んで、Raijin Float がブラジルで実証されることは、日本の技術力を世界に示す重要な試金石となります。
3. 将来の輸出市場への布石
米国西海岸、スコットランド、ノルウェー、韓国、台湾など、深海を抱える地域では浮体式の需要が急拡大。GWECは2034年までに19GWの浮体式洋上風力が設置される予想しています。

今後の展望
Aura Sul Wind Projectは単なる実証にとどまらず、ブラジルが持つ石油・ガス産業の知見や港湾インフラを活用し、同国を将来の洋上風力リーダーへ押し上げる可能性があります。一方で日本にとっては、浮体式技術の海外初輸出という歴史的成果であり、世界の洋上風力市場での信頼と存在感を築く第一歩です。
まとめ
革新的なRaijin Floatを採用したAura Sul Wind Projectは、単なるパイロットプロジェクトではありません。これは、日本の浮体式洋上風力技術が初めて海外へ輸出される歴史的瞬間であり、日本のイノベーションが世界のエネルギー転換をリードする可能性を示す事例です。
JB Energy(Japan Blue Energy)はこう締めくくっています:
「ブラジルは本プロジェクトを通じ、石油・ガス産業で培った経験、優れた技術力、独自の地理的優位性を活かし、世界の洋上風力分野におけるリーダー的地位を確立しようとしています。」
DeepWindでは、今後も日本の浮体式技術が国際的にどう展開していくかを追跡し、世界市場への貢献を発信していきます。