日本は、洋上風力発電の導入を加速させており、その象徴的なプロジェクトの一つが山形遊佐洋上風発電プロジェクトです。本事業は、日本政府が進める第3回洋上風力発電入札(通称:ラウンド3)の一環として実施され、2030年までに10GW、2040年までに30~45GWの洋上風力発電容量を確保するという国家目標達成に向けた重要なステップとなります。
本プロジェクトの総発電容量は450MWに達し、着床式洋上風力発電として日本の電源構成の脱炭素化に大きく貢献するとともに、地域産業の発展や経済活性化を促進することが期待されています。この記事では、プロジェクトの詳細、スケジュール、推定されるCAPEX&OPEXについて詳しく解説します。
他の促進区域の動向もあわせて把握したい方は、全国の洋上風力プロジェクトまとめをご覧ください。
1. プロジェクト概要
| プロジェクト名 | 山形遊佐洋上風発電事業 |
| 開発事業者 | 山形遊佐洋上風力合同会社 |
| コンソーシアム | 丸紅株式会社 関西電力株式会社 BP Iota Holdings Limited 東京ガス株式会社 株式会社丸高 |
| 設置場所 | 山形県遊佐町沖合 |
| 発電方式 | 着床式洋上風力発電 |
| 風車機種 | Siemens Gamesa Renewable Energy(SGRE)製 |
| 供給価格 | 3.0円/kWh |
| 発電容量 | 450MW(15MW × 30基) |
| 建設開始 | 2027年11月(陸上)、2029年3月(洋上) |
| 運転期間 | 2030年6月~2055年 |
2. 設置場所
2.1 海域・地理的特徴
山形県北部の日本海沖。庄内平野沖合に広がる海域で風況良好。冬季は強風多く、海氷の心配はない。水深は概ね20~30m。
2.2 港湾インフラ・系統接続
基地港湾は酒田港などの活用を想定。送電は東北電力ネットワークの系統に接続予定で、近隣地域への送電線整備も検討。

3. プロジェクトの概要
3-1. コンソーシアム構成員
丸紅株式会社
- 国内で随一の洋上風力の実績を有する大手総合商社
関西電力株式会社
- 国内最大規模の電力会社
BP Iota Holdings Limited
- 世界トップクラスの国際エネルギー会社
東京ガス株式会社
- 新電力トップ、国内最大のガス会社
株式会社丸高
- 庄内地域を基盤とする地域最大級の総合建設会社
3-2. 事業実施体制
建設期間中

操業期間中

4. プロジェクトスケジュール
4-1. 全体スケジュール
- 開発・設計フェーズ(2024年~2027年)
- 2024年12月:公共入札の受注
- 環境影響評価、風況、波浪、海底地質調査
- 地元協議・調整
- ウィンドファーム認証、工事計画届
- 建設フェーズ(2027~2030年)
- 2027年11月:陸上変電所と送電インフラの建設
- 2029年3月:洋上基礎とケーブルの設置
- 2029年7月:風車の組立と設置
- 運用・保守フェーズ(2030年~2055年)
- 風車の維持管理:SGRE
- 運転管理(BOP):SPC
- 撤去・再発電フェーズ(2055年以降)

4-2. EIA(環境影響評価)の進捗状況
| 都道府県 | 事業名称 | 事業者名 | 手続段階 | 事業規模 | 最終更新日 |
|---|---|---|---|---|---|
| 山形県 | (仮称)山形県遊佐沖洋上風力発電事業 | 遊佐沖洋上風力発電に係る環境アセスメント共同実施コンソーシアム | 方法書 | 総出力:最大450,000kW、基数:最大52基(単機出力:9,500~15,000kW) | 2025年03月25日 |
| 山形県 | (仮称)山形県飽海郡遊佐町沖洋上風力発電事業 | 東京電力リニューアブルパワー株式会社 | 事業廃止 | 総出力:最大500,000kW | 2024年04月30日 |
| 山形県 | (仮称)山形県遊佐町沖洋上風力発電事業 | 中部電力株式会社 | 事業廃止 | 最大47基(単機出力9,500~12,000kWを想定)、最大出力450,000kW | 2023年07月25日 |
| 山形県 | (仮称)山形県飽海郡遊佐町沖着床式洋上風力発電事業 | 伊藤忠商事株式会社 | 配慮書 | 総発電出力:最大494,000kW、単機出力:9,500~15,000kW、基数:最大52基 | 2022年04月05日 |
| 山形県 | (仮称)遊佐洋上風力発電事業 | 日本風力開発株式会社 | 方法書 | 最大500,000kW、単機出力:9,500~15,000kW級、36~46基 | 2022年03月22日 |
| 山形県 | (仮称)遊佐町沖洋上風力発電事業 | 石油資源開発株式会社及び九電みらいエナジー株式会社 | 事業廃止 | 最大484,500kW、定格出力9,500kW~12,000kW級を最大51基設置 | 2022年01月25日 |
| 山形県 | (仮称)山形遊佐町沖洋上風力発電事業 | インベナジー・ウインド合同会社 | 事業廃止 | 風量発電所総出力:最大456,000kW(計画段階における想定の総出力)、風力発電機の単機出力:9,500kW-14,000kW級程度、風力発電機の配置基数:最大48基(単機出力9,500kWの場合) | 2022年01月25日 |
| 山形県 | (仮称)山形県遊佐町沖における洋上風力発電事業 | SBエナジー株式会社 | 事業廃止 | 風力発電機の基数:最大51基(単機出力9,500kW~12,000kWを想定)、総発電出力:最大480,000kW | 2022年01月25日 |
| 山形県 | (仮称)山形県庄内遊佐町沖洋上風力発電事業 | 住友商事株式会社 | 事業廃止 | 風力発電所総出力(最大) :430MW (430,000kW) ~ 500MW (500,000kW)程度、風力発電機の単機出力 :9. 5MW(9,500kW) ~14.0MW(14,000kW)程度、風力発電機の設置基数 :最大45基 | 2022年01月18日 |
| 山形県 | (仮称)山形県遊佐町沖着床式洋上風力発電事業 | 丸紅株式会社及び関西電力株式会社 | 事業廃止 | 基数:最大52基、総出力:最大約494,000kW(494MW) | 2022年01月11日 |
5. CAPEX & OPEX 推定
洋上風力プロジェクトの採算性を評価するうえで、CAPEX・OPEX・LCOE・IRR といったコスト関連指標は極めて重要です。しかし、日本の促進区域における具体的なコスト情報は、公開資料が限られており、投資家や事業者にとって判断材料が不足しているのが現状です。
そこで代表地点の立地条件(離岸距離・水深・港湾距離)を基に、NEDOのコストモデルを用いてCAPEX・OPEX・LCOE・IRRを推定しました。
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まとめ
山形遊佐洋上風発電プロジェクトは、日本の再生可能エネルギー推進における重要なマイルストーンとなります。持続可能性、経済発展、技術革新に重点を置き、日本の洋上風力発電の拡大に向けた礎を築きます。
再エネ海域利用法における「促進区域」の一覧は、洋上風力促進区域12プロジェクト一覧 ― 再エネ海域利用法の最前線でご確認いただけます。
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