494MW 秋田県能代・三種・男鹿洋上風力発電プロジェクト

秋田県能代市・三種町・男鹿市沖洋上風力

はじめに

日本は、洋上風力発電の導入を加速させており、その象徴的なプロジェクトの一つが秋田県能代・三種・男鹿洋上風力発電プロジェクトです。本事業は、日本政府が進める第1回洋上風力発電入札(通称:ラウンド1)の一環として実施され、2030年までに10GW、2040年までに30~45GWの洋上風力発電容量を確保するという国家目標達成に向けた重要なステップとなります。

「本記事では、再エネ海域利用法に基づき「促進区域」に指定されている秋田県能代市、三種町及び男鹿市沖の洋上風力プロジェクトについて、基本情報と進捗状況を整理し、経済性や課題を解説します。 他の促進区域の動向もあわせて把握したい方は、全国の洋上風力プロジェクトまとめをご覧ください。

1. プロジェクト概要

プロジェクト名秋田能代・三種・男鹿オフショアウィンドファーム
開発事業者秋田能代・三種・男鹿オフショアウィンド合同会社
コンソーシアム三菱商事洋上⾵⼒株式会社、株式会社シーテック、三菱商事株式会社
設置場所秋田県能代市、三種町、男鹿市沖
発電方式着床式洋上風力発電
風車機種GE
供給価格13.26円/kWh
発電容量494MW(13MW×38基)
建設開始2026年
運転期間2028年12月~2052年4月

2. 設置場所

2-1. 海域・地理的特徴

海域面積約6,269ha。水深は概ね10m〜30mで、沿岸の水深10m以浅の漁場を避けて風車を配置。強風が見込まれる日本海沿岸域。

2-2. 港湾インフラ・系統接続

能代港を建設・運転の基地港湾として活用。東北電力ネットワークの能代変電所に接続予定。

Akita Noshiro Mitane Oga Offshore Wind location
出典:秋田能代・三種・男鹿オフショアウィンドファーム

3. 発電設備概要

Akita Noshiro Mitane Oga Offshore Wind WTG overview
出典:METI公開資料(秋田県能代市、三種町及び男鹿市沖公募占用計画の概要)

4. プロジェクトスケジュール

プロジェクトのタイムラインとフェーズ

  1. 開発・設計フェーズ(2021年~2026年)
    • 2021年12月:公共入札の受注
    • 環境影響評価、風況、波浪、海底地質調査
    • FIT 申請および許可
    • 地元関係者説明・同意
    • ウィンドファーム認証、工事計画届
  2. 建設フェーズ(2026年~2028年)
    • 2026年3月:陸上変電所と送電インフラの建設
    • 2027年6月:洋上基礎とケーブルの設置
    • 2028年:風力タービンの組立と設置
  3. 運用・保守フェーズ(2028年~2052年)
    • 風車の維持管理:GE
    • 操業・保守(洋上):北拓
    • 操業・保守(船舶保有・管理):日本郵船
    • 操業・保守(陸上系統):シーテック
  4. 撤去・再発電フェーズ(2052年以降)
    • 風力発電設備の寿命終了時の計画
    • 将来のエネルギー政策に基づく再稼働の可能性
Akita Noshiro Mitane Oga Offshore Wind schedule
出典:METI公開資料(秋田県能代市、三種町及び男鹿市沖公募占用計画の概要)

5. CAPEX & OPEX 推定 (NEDOモデルに基づく)

資本支出(CAPEX)と運用支出(OPEX)を、最新のNEDO洋上風力発電コストモデルに従い推定しました。

秋田県能代・三種・男鹿洋上風力発電プロジェクト資本支出(CAPEX)の推定は約2035億円で、運用コスト(OPEX)は年間約36億円と推定されます。

📌 CAPEX 内訳 (494MW)

資本費の構成推定費用 (億円)
風車1119
基礎&施工773
変電所 & 系統接続 等142
合計2034

6. 地元調整状況

協議会にて地域共生策を協議中。発電事業者は漁業影響調査や地域振興策を実施予定。能代市と企業コンソーシアムが連携協定を結び、地域活性化にも取り組み。494MWの容量は、日本の洋上風力発電の新たな基準を設定し、将来の大規模プロジェクトへの道を開きます。

7. 事業計画をゼロベースで見直し?

三菱商事は、国内3カ所の洋上風力発電プロジェクトの見直しに伴い、2024年4〜12月期に522億円の減損損失を計上したと発表しました。中西勝也社長は記者会見で「減損は重く受け止めている」とし、今後の事業方針をゼロベースで検討する意向を示しました。

7-1. 減損の原因と今後の方針

三菱商事は2021年の入札で3案件を受注し、約3年間開発を進めてきたものの、世界的なインフレ、円安、金利上昇などの影響でコストが想定を大きく上回りました。そのため、採算性を再評価しており、最終的な事業継続の判断は今後決定するとしています。

また、計上した資産のほぼ全額を損失処理しており、今後追加の減損が発生する可能性はあるものの、影響は限定的と説明しました。

7-2. 減損損失の内訳

  • 調査・設計・許認可取得の費用を資産として計上していたが、今回すべて損失処理。
  • 既に支払った費用に加え、今後発生予定のコストも含めた総額が522億円。

7.3 入札時の価格設定について

2021年の入札では、三菱商事は競合他社を大幅に下回る低価格で落札しましたが、同社は「エネコの知見を活用し、リスク分析を行った上での判断だった」と説明。結果として、想定以上のインフレやコスト上昇が事業の採算性に大きく影響したとしています。

7-4. 洋上風力事業の今後

三菱商事は、洋上風力が脱炭素社会の重要な電源であることを認識しており、今後の事業方針については、インフレや金利、為替動向などを踏まえて慎重に判断する方針です。

まとめ

秋田県能代市、三種町及び男鹿市沖では、地域特性を活かしたプロジェクトが進行中です。

他の「促進区域」との比較や全国の動向については、全国の洋上風力プロジェクトまとめもぜひご参照ください。

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