2025年12月の洋上風力ニュースダイジェスト|最新動向まとめ|DeepWind

DeepWind Weekly Dec 2025 digest 1

本記事では、2025年12月に発表された主要トピックを週ごとに振り返ります。

2025年12月第1週

1. 第1ラウンド撤退を踏まえた7つの事業環境整備

2025年11月、経済産業省・国土交通省は「洋上風力事業を完遂させるための事業環境整備」を公表しました。第1ラウンドで撤退事例が発生したことを受け、政府は今後のラウンド、特に第2・第3ラウンドの事業を確実に進めるための制度パッケージをまとめたものです。

本記事では、政府資料の論点を整理しつつ、DeepWindとして「実務・投資・戦略」の視点から今回の施策が日本の洋上風力にどのような変化をもたらすのかを解説します。

詳細記事はこちら 👉 日本の洋上風力政策が大転換:第1ラウンド撤退を踏まえた7つの事業環境整備を徹底解説

2. 長期脱炭素電源オークションとは何か

日本のエネルギー政策の中心に、いま新たに「長期脱炭素電源オークション(LTDA)」が据えられつつあります。脱炭素電源の建設には数百億〜数千億円規模の初期投資が必要ですが、電力市場の価格変動は激しく、従来制度のFITやFIPだけでは投資の確実性が十分とは言えません。

こうした課題を踏まえ、政府は固定費(CAPEX+固定的OPEX)を20年間で確実に回収できる新制度として、長期脱炭素電源オークションを導入しました。本記事では、最新の公表資料にもとづき、制度の仕組み、対象電源、洋上風力ラウンドへの適用、発電事業者・需要家への影響、PPAとの関係までを総合的に整理します。

詳細記事はこちら 👉 長期脱炭素電源オークションとは何か:仕組み・FIT/FIPとの違い・洋上風力への影響を徹底解説

3. Scope2とは何か

企業の温室効果ガス排出量は、「どこで排出が発生したか」によって Scope1・Scope2・Scope3 の3区分に分類されます。このうち Scope2(購入電力に伴う間接排出) は、企業が最も早く削減しやすい排出源であり、再エネ調達戦略の核心を成します。

特に、日本企業の間で導入が進む コーポレートPPA(企業向け電力購入契約) は、Scope2排出削減の中心的な手段です。

本記事ではPPAの仕組みを理解する前提として、「Scope2とは何か」「どのように計算されるのか」「ロケーション基準/マーケット基準とは」など、基礎となる考え方を整理します。

詳細記事はこちら 👉 Scope2とは何か:定義・具体例・計算方法・ロケーション基準/マーケット基準を徹底解説

2025年12月第2週

1. 電気を運ぶ「蓄電池搭載船」、屋久島で実証開始 ― 離島送電と洋上風力の代替手段に期待

電気を貨物のように海上輸送する「電気運搬船」の実証事業が、PowerXの子会社である海上パワーグリッドによって屋久島で始まりました。屋久島で発電された水力電気を蓄電池に蓄え、種子島など周辺離島へ運ぶ計画で、2028年ごろの運航開始を目指しています。今後、海底ケーブル敷設が難しい海域での送電手段として、浮体式洋上風力を含む再エネ導入の課題解決にも寄与する可能性があるとされています。

出典:産経新聞

2. 長崎・五島で国内初の商用浮体式が稼働へ、地域経済にも期待

長崎県五島市沖で、浮体式洋上風力発電所が2026年1月に国内で初めて商用運転を開始します。地元の企業団体は研究会を設立し、部材製造など関連産業への参入準備を進めてきました。20年間の保守を含めた経済波及効果は40億円以上と見込まれ、地域では観光効果への期待も高まっています。

出典:日本経済新聞

3. 国内初、ドローン「Dr.Bee」が洋上風車のLPS点検に成功 ― 保守点検の新時代へ

福島三技協は、自社開発したドローン点検装置「Dr.Bee」を用いて、国内で初めて洋上風力発電機のブレードLPS(雷保護システム)点検に成功したと発表しました。陸上では2025年3月に事業化し、9か月で130基を点検する実績を持つ技術で、従来のロープワーク点検が抱えてきた安全性・人員不足・コストといった課題への解決策として注目されています。今回の洋上での成功は、保守点検の効率化と安全性向上に向けた実用化の大きな一歩となり、同社は今後、洋上向けサービスの本格展開に向けた技術開発を進める方針です。

出典:株式会社三技協プレスリリース

2025年12月第3週

1. 秋田沖洋上風力、主要電力・商社連合が事業継続の意思を明確化

JERAグループ、Jパワー、東北電力、伊藤忠商事で構成されるコンソーシアムは、秋田県沖洋上風力事業における保証金の最終回を納付したと発表しました。保証金は3回に分けて支払う仕組みで、今回が3回目となります。累計の保証金額は約40億円規模とされています。

政府の洋上風力公募制度では、事業継続のために保証金の納付が義務付けられており、事業から撤退した場合は全額が没収されます。今回の納付により、本事業は制度上、事業継続の意思が明確になった形です。

本案件は、出力31万5,000kW、2028年6月の運転開始を目指しています。

出典:日本経済新聞

2. 新潟沖・長崎沖洋上風力、複数案件で事業継続に向けた動き

新潟県村上市・胎内市沖の洋上風力事業では、三井物産、大阪ガス、RWE Japanの3社連合が、保証金の最終回を納付しました。納付額は非開示ですが、累計で約90億円規模とみられています。運転開始は2029年6月を予定しています。

また、長崎県西海市江島沖では、住友商事と東京電力リニューアブルパワーの連合が保証金を納付しました。累計額は約50億円規模とされ、2029年8月の運転開始を目指しています。

これらの保証金納付は、洋上風力事業を継続する意思を示すものですが、コスト上昇や風車調達といった課題が解消されたわけではありません。

出典:日本経済新聞

3. 日本の洋上風力制度は何が変わったのか― 公募制度と事業環境整備を一体で読み解く

2025年11月から12月にかけて、日本の洋上風力を巡る制度について、公募制度の見直しと事業環境整備策が相次いで示されました。これらは一見すると個別の制度調整のようにも見えますが、全体を通して読むと、政策側の問題意識や優先順位の変化が浮かび上がってきます。

本記事では、公募制度(どのように事業者を選ぶのか)と事業環境整備(選定後の事業をどう支えるのか)を切り分けるのではなく、一体の政策パッケージとして整理し、今回の制度見直しが何を意味するのかを読み解きます。

👉 日本の洋上風力制度は何が変わったのか― 公募制度と事業環境整備を一体で読み解く

2025年12月第4週

1. 米国、国家安全保障を理由に洋上風力建設を一時停止

米国の内務省は、国家安全保障上のリスクを理由に、国内で建設中の大規模洋上風力発電所について、計画の一時停止を発表しました。対象は米東海岸沖で進められている複数のプロジェクトです。

一時停止期間中は、内務省と国防総省が合同でリスク評価を行うとされており、再生可能エネルギーに慎重な姿勢を強める米国政権の方針が、洋上風力分野にも直接的に影響する形となりました。全米規模での包括的な停止は今回が初めてです。

出典:日本経済新聞

2. 三菱商事の洋上風力撤退、安値落札が採算性を圧迫— 経産省・国交省が要因分析を公表

経済産業省および国土交通省は、三菱商事連合が計画していた洋上風力発電事業の撤退要因を分析した資料を公表しました。資料では、資材価格の高騰や円安の影響に加え、「安価な供給価格での落札が、事業採算の確保を困難にした側面は否定できない」と指摘しています。

価格競争の激化が事業リスクを高めた可能性を示した形で、今後の入札制度や価格設計を検討する上で、重要な示唆を与える内容となっています。

出典:日本経済新聞

3. 清水建設、洋上風力向けSEP船でブルーボンドを発行へ

清水建設は、洋上風力発電施設の施工に用いるSEP船「BLUE WIND」の建造資金のリファイナンスを目的として、100億円規模のブルーボンドを2026年1月に発行予定と発表しました lHGV。

本社債は、SEP船を資金使途とした国内初のブルーボンドとされ、ICMAのグリーンボンド原則や環境省ガイドラインに適合する旨の評価を取得しています。

出典:清水建設IRニュース

今月のまとめ

2025年12月は、日本の洋上風力が「制度の見直し」と「事業継続の選別」が同時に進んだ月でした。第1ラウンド撤退を受けた事業環境整備や長期脱炭素電源オークションの整理が進む一方、秋田・新潟・長崎では保証金納付を通じて事業継続の意思を示す案件も現れました。浮体式の商用化や施工・保守を支える技術、SEP船向けブルーボンド発行など周辺インフラの動きも加わり、洋上風力は「拡大」から「持続可能性と実行力が問われる段階」へ移行しつつあります。

📘 2025年 洋上風力ニュース総まとめ
2025年を通じて起きた主要な洋上風力ニュースを一挙に振り返り。
プロジェクト進展、政策動向、浮体式技術のトピックを網羅しています。

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2025年の洋上風力ニュースダイジェスト

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