Published: 10月 17, 2025
Last updated: 4月 15, 2026
日本の浮体式にとって歴史的な一歩
日本の浮体式洋上風力産業は、歴史的な節目を迎えています。初めて日本の浮体式基礎技術が海外で実証されることになりました。2025年6月13日にリオグランデ・ド・スル州で発表された 「Aura Sul Wind Project」 は、JB Energy(Japan Blue Energy)がリードし「Raijin Float」 と 世界最大の洋上風力タービン(MySE18MWタービンが組み合わされます。これは、日本の技術が国際舞台へと踏み出す転換点です。
Aura Sul Wind Project:ブラジル洋上風力の新章
JB Energy(Japan Blue Energy)の LinkedIn発表によると、Aura Sul Wind Projectは ブラジル初の浮体式洋上風力のパイロットプロジェクトであり、世界有数の風況と強力な港湾インフラを背景に実施されます。
「Raijin Float」とは?

Raijin Floatは プレキャスト・プレストレストコンクリート を用いた設計で、深海 (>50m) に対応可能。JB Energyによれば、この技術により以下の効果が期待されています。
- 鋼製基礎と比べて CAPEXを最大50%削減
- 固定式基礎と比べて 設置コスト・期間を削減
- コンクリート構造により 建設時のCO₂排出を低減
収益化までの期間を短縮し、投資回収を加速する効果が見込まれます。

グループメンバー
本プロジェクトには以下の企業・機関が参加しています。
企業:
- JB Energy(日本) – コンソーシアムリーダー、Raijin Float技術の提供
- MingYang Smart Energy(中国) – 世界最大18MWタービンの供給
- Technomar Engenharia(ブラジル) – デジタルツインおよびエンジニアリング支援
- blueOasis(ポルトガル) – HydroTwin技術による海洋生物・環境データ収集
- PORTOS-RS(ブラジル) – 港湾インフラと物流支援
- Licks Attorneys(ブラジル) – 法務サポート
学術機関:
- リオグランデ・ド・スル連邦大学(ブラジル) – ブラジルにおけるR&D、教育、人材育成
- 東京大学(日本) – R&Dおよび日本における人材育成
制度支援:
- Sindienergia-RS(ブラジル) – リオグランデ・ド・スル州におけるステークホルダー調整
- ABEEólica(ブラジル) – ブラジル国内のステークホルダー調整
今後は環境評価・設計・建設を経て、2030年以降の商業展開を目指します。
なぜ重要なのか:日本の浮体式が世界市場へ

1. 日本の浮体式技術、海外初進出
これまで日本の浮体式洋上風力は福島・北九州・長崎など国内実証に限られてきました。Aura Sul Wind Projectはその国際化の第一歩です。GWEC「Global Offshore Wind Report 2025」でも、浮体式は「次の成長フロンティア」とされ、日本は先行国の一つに位置づけられています。
2. 世界的競争の中での実証
欧州のセミサブや米国設計の浮体式と並んで、Raijin Float がブラジルで実証されることは、日本の技術力を世界に示す重要な試金石となります。
3. 将来の輸出市場への布石
米国西海岸、スコットランド、ノルウェー、韓国、台湾など、深海を抱える地域では浮体式の需要が急拡大。GWECは2034年までに19GWの浮体式洋上風力が設置される予想しています。

【2026年4月更新】IBAMAへの環境ライセンス申請を開始——ブラジル3番目の洋上風力パイロットに
2026年3月、Aura Sul Wind Projectは新たな節目を迎えました。Japan Blue Energyは、ブラジル連邦環境・再生天然資源院(IBAMA)に対し、環境ライセンスプロセスの開始を正式に申請しました。
これにより、Aura Sul Windはブラジルで環境ライセンシング段階に入った3番目の洋上風力パイロットプロジェクトとなりました。先行する2件は、リオデジャネイロでPetrobrasが主導するプロジェクトと、リオグランデ・ド・ノルテでSENAIが主導するプロジェクトです。3件はそれぞれ異なる技術構成を採用しており、合わせてブラジルの洋上風力産業を形成するための規制・環境・技術的な基準を確立する役割を担っています。
プロジェクト概要(更新)
- 位置:リオグランデ・ド・スル州沖合約65km(座標:32.37°S, 51.50°W)
- 水深:44m
- 方式:浮体式セミサブ型(Raijin Float/プレストレストコンクリート製)
- タービン:18MW級(商用スケール)1基
- 係留:海底アンカーによる係留、海底ケーブルで系統接続
なぜこの進展が重要なのか
1. 「構想」から「許認可プロセス」への移行
環境ライセンスの申請は、プロジェクトが計画段階を超え、ブラジルの連邦規制当局との正式な審査プロセスに入ったことを意味します。パイロットプロジェクトとはいえ、ここで確立される環境評価の枠組みは、将来の商用規模プロジェクトの先例となります。
2. コンクリート浮体基礎のローカライゼーション戦略が具体化
Raijin Floatのプレストレストコンクリート技術は、ブラジル国内で完全に製造可能な設計です。ブラジルは世界有数のセメント・コンクリート産業基盤を有し、数十年にわたる石油・ガスオフショア事業で培った造船所・専門船舶・港湾インフラが蓄積されています。Japan Blue Energyは、これらの既存の産業基盤を浮体式洋上風力に転用する「サプライチェーン・トランジション」として位置付けています。
3. ブラジルの3パイロットが洋上風力産業の基盤を形成
Petrobras(リオ)、SENAI(リオグランデ・ド・ノルテ)、そしてAura Sul Wind(リオグランデ・ド・スル)。この3件がそれぞれ異なる技術で環境評価・規制対応・コスト把握の実績を積むことで、ブラジル洋上風力市場への投資の予見可能性が高まります。投資家にとっては、規制リスクの低減がスケール投資の前提条件であり、パイロットフェーズの進捗はその先行指標です。
出典:Japan Blue Energy / Aura Sul Wind プレスリリース(2026年3月)
今後の展望
Aura Sul Wind Projectは単なる実証にとどまらず、IBAMAへの環境ライセンス申請という具体的な許認可プロセスに入ったことで、ブラジルが持つ石油・ガス産業の知見や港湾インフラを活用した洋上風力産業化への道筋がより現実味を帯びています。
まとめ
革新的なRaijin Floatを採用したAura Sul Wind Projectは、単なるパイロットプロジェクトではありません。これは、日本の浮体式洋上風力技術が初めて海外へ輸出される歴史的瞬間であり、日本のイノベーションが世界のエネルギー転換をリードする可能性を示す事例です。
JB Energy(Japan Blue Energy)はこう締めくくっています:
「ブラジルは本プロジェクトを通じ、石油・ガス産業で培った経験、優れた技術力、独自の地理的優位性を活かし、世界の洋上風力分野におけるリーダー的地位を確立しようとしています。」
DeepWindでは、今後も日本の浮体式技術が国際的にどう展開していくかを追跡し、世界市場への貢献を発信していきます。
洋上風力の最新技術や今後の展望について、より幅広く知りたい方は、以下の総まとめ記事をご覧ください:
🌊 洋上風力の技術と未来:基礎から浮体式・タービン・最新動向まで総まとめ【2025年版】
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