はじめに
洋上風力プロジェクトの採算性を評価するうえで、CAPEX・OPEX・LCOE・IRR といったコスト関連指標は極めて重要です。
しかし、日本の促進区域における具体的なコスト情報は、公開資料が限られており、投資家や事業者にとって判断材料が不足しているのが現状です。
本記事では、千葉県銚子沖洋上風力を対象に、代表地点の立地条件(離岸距離・水深・港湾距離)を基に、NEDOのコストモデルを用いてCAPEX・OPEX・LCOE・IRRを推定しました。
あくまで独自推定値ではありますが、区域ごとの特徴や相対的な比較を行う上での参考となる情報を提供します。
本稿では、事業進捗や制度的な背景ではなく、コスト構造の観点から整理します。千葉県銚子沖洋上風力プロジェクトの概要を知りたい方は以下の記事をご覧ください。
👉 千葉県銚子沖洋上風力発電プロジェクト
1. 区域概要
- 区域名: 千葉県銚子市沖
- 所在地: 千葉県・北東沖
- 最大想定容量: 403 MW
- 指定状況: 促進区域
- 事業者: 三菱商事洋上⾵⼒株式会社、株式会社シーテック、三菱商事株式会社
2. 推定条件(代表値)
本稿では促進区域のポリゴン座標に基づき、区域中央を代表点に設定しました。水深・距離条件はNeoWinsのデータを基に推定しています。

項目 | 推定値 | 備考 |
---|---|---|
水深 (m) | 約13 m | 代表点の水深 |
離岸距離 (km) | 約5.1 km | 代表点から陸揚げ点まで最短距離 |
港湾距離 (km) | 約5 km | 代表点から想定O&M港まで直線距離 |
3. CAPEX / OPEX 推定
CAPEX/OPEXは2024年10月のNEDO洋上風力発電コストモデルを参照にDeepWind 独自に算定しました。
基礎タイプ | 推定CAPEX | 推定OPEX |
---|---|---|
モノパイル基礎 | 約1630 億円 | 約28 億円/年 |
4. LCOE 推定
LCOEは2024年10月のNEDO洋上風力発電コストモデルおよびNeoWinsデータを参照にDeepWind 独自に算定しました。
基礎タイプ | 推定LCOE |
---|---|
モノパイル基礎 | 17.6 円/kWh |
5. IRR 推定
価格条件 | 推定IRR | 売電価格 | 運転期間(想定) |
---|---|---|---|
落札価格 | 5.8 % | 16.49 円/kWh | 25年 |
期待価格 (市場取引やコーポレートPPA活用) | 7.0 % | 18 円/kWh | 25年 |
6. 収益性評価(DeepWind独自)
評価軸 | スコア(★1–5) | 評価結果 |
---|---|---|
収益性(落札価格) | ★★ | 厳しい |
収益性(期待価格) | ★★★ | 普通 |
総合評価 | Bランク | 落札価格では採算性がやや低く、技術的・制度的支援が前提。条件次第で採算の可能性あり。 |
まとめ
千葉県銚子沖の促進区域は、水深13m・離岸距離5kmと比較的条件に恵まれた立地で、CAPEXは約1,630億円、LCOEは17.6円/kWhと推定されました。落札価格を前提としたIRRは5.8%にとどまり収益性は厳しいものの、市場価格やコーポレートPPAを活用した期待価格においては7.0%まで改善が見込まれます。総合的には「Bランク」と評価され、制度的支援やコスト削減の進展が事業成立の鍵となります。
DeepWindでは、こうしたコスト構造や収益性の分析を通じて、投資家・事業者の意思決定に資する実践的な情報を今後も提供していきます。
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