再エネ海域利用法改正でEEZ拡大へ(2026年版)― 開かれた10倍のフロンティアと実行可能領域

Japan Opens the EEZ 1

作成日:2025年6月16日|更新日:2026年6月18日

POLICY & REGULATION

2026年4月1日、改正「再生可能エネルギー海域利用法」(再エネ海域利用法)が施行され、洋上風力発電を領海・内水だけでなく排他的経済水域(EEZ)にも設置できるようになりました。名目上、対象海域は領海(含・内水)の約43万km²から、EEZを含む約400万km²超へと、単純計算で10倍以上に拡大します。これは2019年の制度創設以来、日本の洋上風力フロンティアにとって最大の拡張です。ただし、この見出しの数字と「実際に開発できる領域」は別物です。EEZの大半は浮体式でしかカバーできない急深な海域であり、その浮体式自体も商業的に確立しているのはより狭い水深帯に限られます。本稿では、何が変わったのか、新しいEEZ手続きはどう動くのか、そして近い将来の現実的な機会がどこにあるのかを整理します。

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Policy Design

Execution Reality

Bankability Test
Key Takeaways
1. 法は施行済み、フロンティアはEEZへ
改正法は2025年6月3日に成立・公布され、2026年4月1日に施行されました。開発の境界が領海(約22km)からEEZ(約370km)へ広がり、対象面積は約43万km²から約400万km²超へ――名目で10倍以上に拡大します。
2. EEZは「募集区域」方式+環境大臣の事前調査
領海の「促進区域」とは異なり、EEZでは経産省が指定する「募集区域」、事業者への仮の地位付与、経産省・国交省主導の協議会、そして許可という新プロセスを用います。両区域とも指定前に環境大臣が調査を行う仕組みが新設され、環境スコーピングが事業者主導から政府主導へ移りました。
3. 実行可能な領域は見出しよりずっと小さい
EEZの大半は浮体式でしかカバーできない急深海域で、浮体式の商業的な目安は概ね水深100〜300m、300m超は前商用段階です。据付船の可用性や遠方からの系統接続コストも加わり、近い将来に実際に使える面積は「10倍」のごく一部です。

改正法は何を変えたのか

日本の洋上風力制度は、2019年に施行された再エネ海域利用法――「促進区域」による公募制度を生んだ法律――を土台にしています。これまで、その枠組みは内水と領海にのみ適用されてきました。問題は地理にあります。日本の沿岸棚は狭く、すぐに深海へ落ち込むため、着床式に適した浅い海域は、10GW(2030年)・30〜45GW(2040年)という案件形成目標に比べて限られているのです。

今回の改正は、開発の境界をEEZへ広げることでこのギャップを埋めます。立法プロセスは明快でした。2025年3月7日の閣議決定、2025年6月3日の成立・公布、そして2026年4月1日の施行です。面積の変化は、表で見るのが最もわかりやすいでしょう。

海域区分 概算面積
国土面積 約38万km²
領海(含・内水)― 従来の対象 約43万km²
接続水域 約32万km²
排他的経済水域(含・接続水域) 約405万km²
領海+EEZ ― 新しい対象 約447万km²
+延長大陸棚 約477万km²
出典:海上保安庁海洋情報部のデータより、DeepWind分析

区分を具体的に整理すると、領海は海岸線から12海里(約22km)までで日本が完全な主権を行使する範囲、EEZは200海里(約370km)までで日本がエネルギー開発など経済活動の排他的権利を持つ範囲です。この後者を洋上風力に開いたことが、「10倍」という見出しを生んでいます。

EEZの設置プロセス

EEZは完全な領土主権下にないため、改正法は既存の促進区域制度を単純に延長するのではなく、別個の手続きを設けています。流れは次の4ステップです。

ステップ 内容
① 募集区域の指定 経産省が自然条件等を考慮し、公告・縦覧・関係省庁との協議を経て「募集区域」を指定。
② 仮の地位の付与 事業者が設置区域案・事業計画案を提出し、仮の地位を取得。
③ 協議会の設置 経産省・国交省主導で、関係者を含む協議会が事業計画の詳細を協議。
④ 許可 整合性を確認後、正式に設置を許可。募集区域以外での設置は不可。
出典:METIプレスリリース(2025年3月)、DeepWind分析

プロセスと並行するもう一つの構造変化が、政府主導の環境スコーピングです。促進区域(領海)と募集区域(EEZ)のいずれも、区域指定の前に環境大臣が必要な調査を実施します。これは2026年の促進区域指定ガイドライン改訂で見られた集中型アセスメントと同じ方向で、環境デューデリジェンスを上流に移し、個々の事業者から切り離すものです。海洋環境への配慮を担保しつつ、評価手続きを簡素化する狙いがあります。

👉 促進区域指定ガイドライン改訂(2026年3月)

政策のフロンティアと実行可能な現実

ここで「10倍」という見出しには割引が必要になります。EEZは圧倒的に深海であり、着床式は使えず、新しい対象海域の大半で浮体式が唯一の選択肢になります。浮体式は現実に進展しています――しかし、商業的に実用的なのは概ね水深100〜300mで、300mを超える領域は依然として前商用段階です。EEZのかなりの部分はそれより深いか、あるいは沖合すぎて、系統接続の経済性や据付ロジスティクスがコストを支配します。

Execution Risk

EEZ展開の制約は法的アクセスではなく――それは解決済みです――浮体式洋上風力の「実行」が同期して整うかどうかにあります。使える面積を律する要因は3つです。第1に水深(実用的な浮体式の多くは100〜300m帯だが、EEZの大半はより深い)。第2に据付船の可用性(一部の浮体タイプが必要とする重量物起重機船や専用船を、日本は十分に保有していない)。第3に、海岸から数十〜数百km沖合のサイトでの系統接続コスト(送電費用が事業の経済性を圧倒しうる)。法は10倍のフロンティアを開きましたが、この10年でFID(最終投資決定)に到達できるのはそのごく一部であり、どの部分かは浮体式サプライチェーンの成熟速度に左右されます。

この「水深と浮体タイプ」の論理は、日本の実証パイプラインがセミサブ型に集中してきた理由と同じものであり、外洋EEZの過酷な海象条件は工学的なハードルをさらに引き上げます。

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DEEPWIND VIEW

EEZ拡大は法的な天井を取り払いましたが、浮体式のボトルネックは消えていません――制約が「政策」から「実行」へ移っただけです。

長年、日本の洋上風力の野心を縛ってきた限界は「法的」なものとして説明できました。開発の境界が領海で止まっていたからです。2026年4月、その天井はなくなり、日本が常に「真のポテンシャル」と呼んできたEEZが法的にアクセス可能になりました。これは本物の、そして必要なマイルストーンです。

しかし法的な限界を外すと、次の限界が露出します。EEZは深く、遠く、過酷であり、その開発は浮体式の準備状況――プラットフォームの標準化、据付船、係留サプライチェーン、深水域の系統接続――の関数にほかなりません。この法律の正しい読み方は「日本が洋上風力ポテンシャルを10倍にした」ではなく、「日本が政策の制約を実行の制約へ変換した」です。見出しの面積は簡単な部分であり、実行可能な面積は、浮体式サプライチェーンをどれだけ速く構築できるか――浮体式セグメント全体を規定する「同期したボトルネック」――によって、区域ごとに決まっていきます。

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