オフサイトPPAとは?仕組み・価格構造・リスク・日本での実現方法を徹底解説

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本記事では、環境省が2022年3月に公表した「オフサイトコーポレートPPAについて」の内容を基礎とし、オフサイトPPAの仕組み、価格の構造、関連するリスク、日本での実現方法などをわかりやすく整理します。また、DeepWindとしての補足的な視点も加え、専門家でなくても理解しやすい形で解説します。
(資料の出典は記事末尾に記載しています)

いま注目を集めているPPA(電力購入契約)やコーポレートPPAについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
👉 PPAおよびコーポレートPPAとは?日本の再エネ導入を支える電力契約の基本

1. オフサイトPPAとは

Offsite Corporate PPA

オフサイトPPA(オフサイト・コーポレートPPA)は、企業が自社敷地外に設置された再生可能エネルギー電源から、あらかじめ合意した価格と期間で電力を調達する仕組みです。

“オフサイト”という言葉のとおり、電源は自社の敷地にはありません。代わりに、離れた場所で発電された電力を送配電網(一般の電気の通り道)を通じて受け取ります。そのため、企業は広い土地を持っていなくても大規模な再エネ電源を活用できます。

なぜ注目されているのか?

  • 電力価格が上がっても「長期固定価格」でリスクを抑えられる
  • 再エネ由来の「環境価値(非化石証書)」を確実に確保できる
  • RE100、SBTi、TCFDなどの国際的な要求に対応しやすい

といった理由で、日本企業でも採用が増えています。

2. オンサイトPPAとの違い

オンサイトPPAは企業の敷地内(屋根・空き地)に太陽光パネルなどを設置する方式です。一方、オフサイトPPAは敷地外で発電します。この違いにより、選べる電源規模や費用の構造が変わります。

【比較表:オンサイトPPA vs オフサイトPPA】

観点オンサイトPPAオフサイトPPA
設置場所企業敷地内離れた場所(太陽光・風力など)
調達量敷地の大きさが上限大規模電源を選択できる
契約相手発電事業者発電事業者(+小売事業者の場合あり)
託送料金発生しない発生する
インバランス負担小さい発生する
拠点の移転・閉鎖影響大きい影響が比較的小さい

ポイント:
オフサイトPPAは“敷地が小さいオフィス系企業でも大規模な再エネを調達できる”という強みがありますが、送電網を使うため託送料金やインバランスの調整が必要になります。

3. Physical PPAとVirtual PPA

オフサイトPPAには、電力の扱い方に応じて2種類があります。

【比較表:Physical PPA vs Virtual PPA】

項目Physical PPA(物理供給)Virtual PPA(差金決済)
電力の受け取り電力そのものを受け取る市場で売買し“価格差のみ”調整
環境価値の移転電力とセット電力と分離して移転
託送料金必要不要
同時同量*必要不要
仕組み日本で一般的欧米で普及、日本でも制度上可能

*同時同量:電力は貯められないので、「発電した量」と「使った量」を同じ時間帯で合わせる必要がある

わかりやすく言うと…

  • Physical PPA:電気の“本物”を買う
  • Virtual PPA:電気は市場売買、企業は“再エネの価値”+“価格保証”を得る

というイメージです。

4. オフサイトPPAの価格構造

オフサイトPPAで企業が最終的に支払う費用は、主に次の3つで構成されます。

【3つの構成要素】

  • ① 発電コスト(PPA契約価格)
     発電所を建設・運用する費用が含まれます。
  • ② 託送料金
     電力を送るための“道路使用料”のようなもので、日本では必ず発生します。
  • ③ バランシングコスト(インバランス)
     発電量のズレ(天気による変動など)を送配電側が調整するための費用です。

ポイント:
資料から読み取れる重要な点は、日本では②と③が最終単価に大きく影響するということです。
PPA単価が安く見えても、託送やインバランスで最終コストが上振れするケースがあります。

5. 契約に伴う主なリスク

環境省資料では、オフサイトPPAで発生しうるリスクが体系的に整理されています。

【代表的なリスク】

  • 市場価格が変動し、PPA価格との差が広がる
  • 天気が悪く発電量が減る
  • 設備トラブルや建設遅延
  • インバランスの発生
  • 企業側の工場閉鎖・縮小
  • 制度変更による影響
  • 契約相手の信用リスク

【主要なリスク低減策】

  • 価格の見直し条項
  • 環境価値を活用した補填
  • 小売電気事業者に需給調整を委託
  • 調達不足に備える保険
  • 事前の与信管理
  • 解約・変更ルールを明文化

専門的に見える内容も多いですが、要するに「長期契約なので、想定外に備える仕組みを契約で整えておく必要がある」ということです。

6. 日本での実現方法:直接型と間接型

日本では、オフサイトPPAは次の2つの方式で実現できます。

● 直接型オフサイトPPA

  • 発電事業者と企業が直接契約
  • 2021年の制度改正により、共同組合を介せば“密接な関係がなくても契約可能”

イメージとしては「需要家が発電事業者から直接電気を買う」形です。

● 間接型オフサイトPPA(日本の主流)

  • 小売電気事業者が間に入り、三者で契約
  • 「三者基本契約+二者個別契約」が現実的

これは、日本の電力制度では需給調整(インバランス対策)などを小売事業者が担う必要があるためです。

7. 自己託送との違い

自己託送は、「同一企業または共同組合内で発電した電力を融通する仕組み」で、目的はあくまで“自家利用”です。

一方、オフサイトPPAは“発電事業者と需要家の長期商取引”として位置づけられています。目的も性質も異なるため、区別して考える必要があります。

【比較表:自己託送 vs オフサイトPPA】

観点自己託送オフサイトPPA
法的位置づけ自家消費のための電力融通(同一企業・共同組合)発電事業者と需要家の長期電力売買契約
関係者同一企業または共同組合発電事業者・需要家(+小売事業者)
目的自社の電力利用長期の電力調達と環境価値の取得
環境価値取り扱いは仕組みにより異なる(資料明記なし)電力とともに移転する
コスト構造託送料金が中心PPA単価+託送料金+インバランス

わかりやすく言うと…

  • 自己託送=“自社グループ内で電気を分け合う”
  • オフサイトPPA=“外部の発電事業者から電気を買う”

という違いがあります。

8. DeepWind視点

① PPA単価だけで判断すると誤解につながる

資料では、オフサイトPPAの価格要素として「発電コスト+託送料金+インバランス」が示されています。
これは日本では託送やインバランスが最終単価に大きく影響することを意味します。

“PPA単価が安い=調達が安い”とは限りません。

② 日本では間接型が主流になる蓋然性がある

資料では「三者契約が現実的」と記述されていることから、需給調整や精算といった日本特有の業務を考えると、小売事業者が介在する間接型が中心になると合理的に判断できます。

③ FIP電源との併用が普及の鍵になる

資料では「FIP制度とPPAは両立可能」と明記されています。
これは日本の再エネ事業者にとって収益安定化につながるため、企業が調達する電力もFIP電源が増えていくと考えられます。

④ 自己託送とPPAは制度上近づきつつも目的が異なる

自己託送の定義拡大により柔軟性が高まった一方で、環境価値の確実な取得や長期の価格安定性を重視するならPPAの方が適していると論理的に導けます。

まとめ

オフサイトPPAは、企業が敷地外の再エネ電源から長期・固定価格で電力と環境価値を調達できる仕組みです。日本では、小売電気事業者が仲介する 物理供給型(Physical) が中心となります。価格は PPA単価+託送料金+インバランス で構成されるため、単価だけで判断すると誤解しやすい点に注意が必要です。

また、PPAは外部事業者との商取引であり、「自家利用」を目的とする自己託送とは制度上の性質が異なります。こうした違いを押さえたうえで、自社に合った再エネ調達スキームを選ぶことが重要です。

こちらの記事では、PPAとコーポレートPPAについて、基本概念から契約スキーム、日本における制度や最新事例、今後の課題と展望までを包括的に解説します。
👉 PPAおよびコーポレートPPAとは?日本の再エネ導入を支える電力契約の基本

参照資料

本記事は次の資料に基づいて作成しました。
環境省「オフサイトコーポレートPPAについて(2022年3月更新版)

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