再エネ海域利用法に基づく洋上風力の公募評価基準:スコアリング項目と配点を徹底解説

offshore wind scoring system japan

はじめに

日本の洋上風力発電市場は急速に発展しており、再エネ海域利用法における洋上風力案件の事業者の選定においては効率性・持続可能性・経済効果を確保するための厳格な評価基準が設けられています。本記事では、日本の規制枠組みに基づく洋上風力発電プロジェクトの事業者選定における評価プロセスを解説します。

本記事では個別テーマを取り上げますが、日本の洋上風力政策・制度の全体像を俯瞰したい方は、以下の総まとめ記事もあわせてご覧ください:
👉 日本の洋上風力政策・規制の全体像:制度設計・法律・支援策の徹底解説

1. 洋上風力の事業者選定プロセス

再エネ海域利用法において促進区域に指定されている区域の公募が行われ、各事業者は事業計画を作成し国に提出します。経済産業省と国交省において、事業性が評価され最も適切と思われる事業計画(事業者)が選定されます。

japans sea act developer selecting process
出典:METI公開資料

2. 洋上風力事業選定の主要評価項目

日本の洋上風力プロジェクトの選定プロセスでは、以下の2つの主要要素に基づき、240点満点で応募提案が評価されます。

  • 供給価格(120点) – kWhあたりの電力価格が最も安価な事業者が高得点を獲得。
  • プロジェクトの実現可能性(120点) – 開発能力、財務安定性、リスク管理、地域経済への波及効果などが評価対象。
評価項目(Criteria)配点(Points)主な評価要素(Key Factors)
供給価格(Supply Price)120点価格が低いほど高得点(例:3円/kWh以下で満点)
プロジェクト実現性(Project Feasibility)120点事業者の経験、財務健全性、実行スピード
┗ 実行能力(Project Execution Capability)80点建設・保守計画、O&M(運転・保守)戦略
┗ 経済・環境への影響(Economic & Environmental Impact)40点地元サプライチェーン、地域との関係構築
合計(Total)240点総得点が最も高い事業者が落札

3. 供給価格(120点)

日本の洋上風力事業者選定では、**供給価格(1kWhあたりの入札価格)**が重要な評価項目となります。価格が低いほど高得点が与えられ、最大120点を獲得できます。

3-1. 供給価格のスコアリング方式

スコアは以下の計算式により算出されます:

供給価格スコア =(最低入札価格)÷(当該事業者の入札価格)× 120

  • 同一の洋上風力公募区域内で提示された最低価格が基準として用いられます。
  • 価格が**ZPL(ゼロプレミアム水準)**以下であれば、**自動的に満点(120点)**が与えられます。

3-2. 供給価格評価に関する主なルール

(1) 最低入札価格がZPLを上回る場合:

  • 最低価格がスコア計算の基準値となります。
  • 価格が高くなるほどスコアは低下します。

例:ZPLを上回る場合のスコア計算

事業者入札価格(円/kWh)計算式最終スコア
A社(最低価格)4.0(4.0 / 4.0) × 120120
B社4.5(4.0 / 4.5) × 120106.7
C社5.0(4.0 / 5.0) × 12096.0

(2) 最低入札価格がZPL未満の場合:

  • 入札価格がZPL(本例では3円/kWh)未満の場合、ZPLがスコア計算の基準値として採用されます。
  • ZPL以下の価格を提示した事業者には、自動的に満点(120点)が与えられます。

例:ZPLを下回る場合のスコア計算

事業者入札価格(円/kWh)計算式最終スコア
A社(ZPL未満)2.8自動的に満点120
B社(ZPLちょうど)3.0自動的に満点120
C社3.5(3.0 / 3.5) × 120102.8
D社4.0(3.0 / 4.0) × 12090.0

4. プロジェクトの実現可能性(120点)

各項目に関する具体的な評価方法は以下の通りです。

主分類小分類配点評価方法
プロジェクト実行能力早期運転開始のスピード20点・実現可能と判断される計画について、運転開始の迅速性を評価する
実施体制・実績10点6点・実施実績が公募対象プロジェクトと整合しているか、適切な実施体制が構築されているかを評価する
資金計画10点14点・適切な資金計画が立てられているかを評価する
COD前のプロジェクト計画15点16点・スケジュール、レイアウト、施設構造、建設計画、施工プロセスの妥当性を評価する
COD後のプロジェクト計画5点4点・運用・撤去計画の妥当性を評価する
安定供給体制20点・障害時にも迅速に回復可能な安定供給を実現するハード・ソフト両面のサプライチェーンの強靭性を評価する
経済・環境面への影響関係行政機関との調整能力10点・都道府県知事の意見を聴取し、関係機関との調整実績を評価する
航路・漁業との共存10点・都道府県知事の意見を聴取し、地域・漁業関係者との協力・共存に関する提案内容を評価する
地域経済への影響10点・都道府県知事の意見を聴取し、経済的波及要因の信頼性と経済効果の内容を評価する
国内経済への影響10点・経済的波及要因の信頼性と経済効果の内容を評価する

4-1. 実現可能性のスコアリング方式

(1) 5段階評価方式(+失格カテゴリ)

応募案は以下の6段階で評価されます:

  • トップランナー(100%)
  • 優良(75%)
  • 中位(50%)
  • 一般的(25%)
  • 最低限のレベル(0%)
  • 失格(評価対象外)

(2) 相対評価方式

評価は同一の公募区域内で最も高い得点の応募案を基準として、相対的にスコア化されます。

(3) 早期運開(迅速性)の別途評価

運転開始までの予定期間に応じて、別に定められた基準に基づき最大20点が加算されます。

(4) 最終スコアの算出式

実現可能性スコア =(当該事業者の得点)÷(公募区域内での最高得点)× 120(満点)

最高評価を得た事業者が120点としてスケーリングされ、他の事業者はそれに対する相対スコアとなります。

4-2. 早期運転開始(迅速性)の評価方式

  • 基準となる期間は「6年程度」とされており、第2ラウンドにおける平均的な運転開始期間に基づいています。
  • **最大スコア(20点)**が与えられるのは、5年6カ月以内の運転開始を予定している事業案です(6カ月短縮で加点)。
  • 評価期間ごとのスコア差は、6カ月ごとに2点ずつ減点されます。
Speed of implementation Scoring System
出典:METI公開資料

まとめ

日本の洋上風力発電事業者の選定では、供給価格とプロジェクトの実現可能性の両面から総合的に評価されます。特に、実現可能性の評価(120点満点)は、プロジェクト実行能力(80点)と経済・環境面への影響(40点)に分かれ、詳細なサブ項目ごとに配点が設定されています。

プロジェクト実行能力では、早期の運転開始や資金計画、建設・撤去計画、安定供給体制の強靭性などが重視されます。今回の修正では、実施体制や撤去計画の配点がやや抑えられ、資金計画や建設前の計画への評価が強化されました。

一方、経済・環境面では、地元行政や漁業者との調整能力、地域・国内への経済波及効果が評価対象となり、地域との共生や経済的貢献が求められます。

これらの評価は、定量的な価格競争だけでなく、長期的な実行力や地域貢献を重視する制度設計となっており、持続可能な洋上風力開発を支える重要な仕組みです。

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