2025年10月の洋上風力ニュースダイジェスト|最新動向まとめ|DeepWind

DeepWind Weekly Oct 2025 digest jp

DeepWind Weeklyは、日本の洋上風力発電に関する注目ニュースを毎週お届けするニュースダイジェストです。
本記事では、2025年10月に発表された主要トピックを週ごとに振り返ります。

2025年10月第1週

1. 秋田沖、国産CTVが初の一般海域案件へ – NYKが長期契約

日本郵船は、男鹿・潟上・秋田沖の洋上風力事業者と 国産建造のCTV(作業員輸送船)1隻の長期定期傭船契約 を締結。国内初の一般海域案件に就航予定です。
本船はNorthern Offshore Servicesの設計を基に岩手県で建造。秋田市に設立されたジャパンオフショアサポートが運航管理と人材育成を担い、地域雇用と国内造船業の活性化 に貢献します。

2. 戸田建設など、函館港をSEP船母港に – 2026年運用開始へ

戸田建設・熊谷組・西松建設など6社出資のJWFCは、SEP船(自己昇降式作業船)の母港を函館港に決定。2026年5月に入港予定で、最大18MW級の風車施工に対応します。
協定では、地元調達や港湾利用調整 を盛り込み、地域経済との連携を重視。函館港の深い水深と地理的優位性を活かし、東北や北海道案件の施工拠点となる見通しです。

3. 三井物産など、新潟・村上胎内沖で陸上工事開始 – 10月から

三井物産・大阪ガス・RWEなどが参画する 村上胎内沖洋上風力(総出力684MW) で、10月1日から陸上送電設備の工事が始まります。
当初4月予定が遅延しましたが、2029年6月の商業運転開始スケジュールは維持。送電線ルート調査など準備が進められ、地元経済や雇用効果にも期待が高まっています。

2025年10月第2週

1. 再エネ海域利用法に基づく有望・準備区域の新規指定

経済産業省および国土交通省は、再エネ海域利用法に基づき、洋上風力の促進区域指定に向けた区域整理を実施しました。

新たに「有望区域」として秋田県秋田市沖および福岡県響灘沖の2区域を指定し、さらに「準備区域」として千葉県旭市沖、長崎県五島市南沖(浮体式)、鹿児島県いちき串木野市沖の3区域を整理しました。

2. 日本初の女性首相誕生へ — 高市早苗氏が自民党新総裁に就任

自民党総裁選で高市早苗氏が勝利し、日本初の女性首相となる見通しがほぼ確定しました。
正式な首相任命は国会の首班指名を経て行われますが、政権与党の新総裁として、事実上の次期首相に内定しています。

高市氏はこれまで、大規模太陽光(メガソーラー)による森林伐採や災害リスクなどに懸念を示しており、
再エネ政策の重点が「陸上から海上(洋上風力)へ」移る可能性が高まっています。

3. 三菱商事撤退後の千葉・銚子沖、地域振興会議が初開催

三菱商事が撤退した千葉県銚子沖の洋上風力事業を巡り、10月6日、「銚子地域の未来創造会議」が初めて開催されました。
会議には、千葉県・銚子市・経産省・国交省・三菱商事などが参加し、会議の多くは非公開で行われました。

会合では、三菱商事がこれまで進めてきた地域振興や漁業共生の取り組みを、今後どのように継続していくかを議論。
年内にあと2回の開催を予定し、最終的な報告は法定協議会に提出される見込みです。

2025年10月第3週

1. 「世界洋上風力サミット」秋田で開幕

10月15日、秋田市で「世界洋上風力サミット(World Offshore Wind Summit)」が開幕。日本国内はもちろん、イギリス・フランス・台湾・イタリアなど世界各国から約800人の関係者が参加しました。

主催の日本風力発電協会(JWPA)秋吉優代表理事は、

「2040年までに浮体式で15GW以上、洋上全体で30〜45GWの案件形成を目指す」と述べました。

能代港・秋田港では2022〜2023年にかけて国内初の商業運転が開始され、現在も4つの促進区域と1つの有望区域が指定。由利本荘市・にかほ市沖では浮体式の実証事業も進行中で、秋田は再び「洋上風力の先進地」として注目を集めています。

出典:ABS秋田放送

2. オランダの係留ケーブルメーカー「ファイバーマックス」、秋田を生産拠点候補に

浮体式風車の係留ケーブルなどを製造するオランダ企業 ファイバーマックス(FibreMax) が、秋田県・秋田市と合意書を締結し、秋田を優先的な生産拠点候補として協議を進めることを発表しました。

同社が製造するケーブルは、従来の鋼製に比べて軽量・高耐久で、1,000m超の水深にも対応。欧州を中心にシェアを拡大しています。秋田港周辺での工場設立を視野に、2028年頃までに具体計画を策定する予定です。

鈴木健太知事は、

「秋田県がアジア圏の浮体式洋上風力のハブになれる可能性がある。非常に夢のある話だ」とコメントしました。

出典:Yahoo Japan ニュース

3. DENZAI E&C、秋田港で風力設備の組み立て拠点を設立

DENZAI E&C(東京・港区) は秋田県・秋田市と立地協定を締結。2026年4月に秋田支店を開設し、秋田港内の3.5万㎡の敷地で風車タワーやブレードの組立・整備を行います。

現場には吊上げ能力2,500トンの大型クローラークレーンを設置。当初5名からスタートし、1年以内に30名の地元採用を目指します。
まずは男鹿・潟上・秋田沖のOffshore Green Energy向け業務に従事し、将来的には北海道〜新潟沿岸の洋上風力プロジェクトにも対応する予定です。

上村浩貴社長は、

「プロジェクトはなくならず、一部が遅れるだけ。2028〜2029年に案件が集中する」と述べました。

出典:日本経済新聞

2025年10月第4週

1. 北海道電力、道南で洋上風力人材育成を強化へ

北海道電力は、洋上風力発電の保守・点検などに携わる人材を育成するため、2026年度中に江差町(陸上訓練)と函館市(海上訓練)に研修施設を整備する計画を発表しました。

欧州標準のGWO認証取得を目指し、2027年度の運用開始を見込んでいます。道南の檜山沖・松前沖促進区域とも連動し、地域雇用と産業集積を促す狙いです。

出典:日本経済新聞

2. パスコ、日本初の風況・魚群同時観測型フローティングライダー導入

株式会社パスコは、風況と魚群を同時に観測できる国内初の浮体式観測装置を導入し、石川県輪島市沖での調査を開始しました。この装置は、風況観測と海中魚群観測を一体化し、浮体式洋上風力の検討や漁業との共生を支援します。

複数のセンサーを統合することで、調査の効率化とコスト削減にもつながるとしています。

出典:株式会社パスコ プレスリリース

3. 古河電工、千葉県富津市に海底送電ケーブル新工場を建設へ(2030年稼働予定)

古河電気工業は、千葉県富津市高圧直流送電(HVDC)用の海底ケーブル工場を新設し、2030年の稼働を目指しています。総投資額は約1000億円で、このうち最大307億円を国のGXサプライチェーン構築支援事業による補助金で賄うとのこと。再エネ電力の地域間連系やデータセンター需要に対応し、国内外での長距離送電の貢献を目指しています。

出典:日本経済新聞

2025年10月第5週

1. 浮体式洋上風力で日本主導へ:FLOWRAが総額60億円の研究開発を推進

浮体式洋上風力技術研究組合(FLOWRA、理事長:寺崎正勝氏)は、浮体基盤などの量産技術確立と国際基準づくりを目指し、政府補助を含む総額約60億円規模の研究開発を進めていると発表しました。

FLOWRAは2024年に三菱商事系、関西電力、東京ガス、東電リニューアブルパワーなどによって設立され、現在は21社が参加しています。2030年度の実用化を目指し、製造・施工76社との連携体制もすでに整備しています。

三菱商事連合の撤退など、洋上風力業界に逆風が吹く中、FLOWRAは「日本発の技術で国際標準をつくる」として、開発を加速する方針を示しました。

出典:日本経済新聞

2. 日鉄エンジとアチハが洋上風力O&Mで協業、国内体制を強化

日鉄エンジニアリング株式会社は、風力発電設備のメンテナンス実績を持つアチハ株式会社と協業し、日本国内の洋上風力発電施設向けO&M(運転・保守)サービスを強化すると発表しました。

日鉄エンジはすでに、世界大手のDeutsche Windtechnikや深田サルベージ建設と協業体制を構築しており、今回の提携で熟練技術者や保守ノウハウを取り込み、定期メンテナンスから大規模補修まで一貫対応が可能な体制を整えます。

同社は2010年から洋上風車基礎のEPCI事業を展開し、石狩湾新港(112MW)や北九州響灘(220MW)などの基礎施工実績を有しています。今後は、全国でのO&M実行体制をさらに拡充し、洋上風力の長期安定運用を支える方針です。

出典:日鉄エンジニアリング株式会社プレスリリース

3. 三井住友海上ら、洋上風力向け「水中ドローン点検サービス」を開始

三井住友海上火災保険株式会社MS&ADインターリスク総研株式会社は、水中ドローン開発企業FullDepthと共同で、洋上風力発電設備向けの海中点検サービスを開発し、提供を開始しました。

このサービスでは、水中ドローンに搭載したカメラやイメージングソナーを活用し、風車基礎部や海底ケーブルなどの状態を可視化・診断します。従来の潜水調査に比べ、安全性とコスト効率を大幅に向上させることが可能です。

両社は2022年から共同研究を進めており、今後は海底ケーブルの損傷予防や異常検知を通じて、洋上風力の安定稼働とリスク軽減に貢献していくとしています。

出典:三井住友海上ニュースリリース

今月のまとめ

2025年10月は、秋田を中心とした洋上風力関連の動きが際立った1か月となりました。
「世界洋上風力サミット」開催を契機に、浮体式技術・サプライチェーン・人材育成といったテーマが再び脚光を浴び、日本の洋上風力産業が次のフェーズに進む兆しが見え始めています。

産業面では、古河電工の海底ケーブル新工場計画DENZAI E&Cの秋田拠点開設ファイバーマックスの進出計画など、製造・施工・部品供給の各段階で国内拠点整備が進展しました。これにより、東北・北海道エリアを中心とした地域産業クラスターの形成が現実味を帯びてきています。

一方で、千葉・銚子沖の再編に見られるように、開発主体の入れ替えや事業継続の不透明さといった課題も浮上しました。
しかし、FLOWRAの主導による60億円規模の浮体式研究や、O&M分野での国内連携強化など、技術と運用の両面での自立化が進む兆しも明確です。

総じて10月は、「海外主導」から「国内主導」へと重心が移り始めた象徴的な月でした。
2026年以降に向け、実装段階への移行が本格化するターニングポイントといえるでしょう。

📘 2025年 洋上風力ニュース総まとめ
2025年を通じて起きた主要な洋上風力ニュースを一挙に振り返り。
プロジェクト進展、政策動向、浮体式技術のトピックを網羅しています。

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2025年の洋上風力ニュースダイジェスト

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