2025年11月の洋上風力ニュースダイジェスト|最新動向まとめ|DeepWind

DeepWind Weekly Nov 2025 digest 1

本記事では、2025年11月に発表された主要トピックを週ごとに振り返ります。

2025年11月第1週

1. 日独が「洋上グリーン水素」で連携 — 九州大学などが2026年に事業会社設立へ

洋上風力の電力を使って海水を電解し、水素を製造・船で回収する「洋上グリーン水素」構想が国内で始動しました。
善衛商事(東京・世田谷)は、ドイツのクルーゼ・オフショア(ハンブルク)および九州大学などと連携し、2026年に事業会社を設立します。欧州での実証試験を経て、2030年代初頭に日本とドイツで風力由来の水素製造プラントの商業運転を目指しています。

出典:日本経済新聞

2. 関西電力、アイルランドの洋上風力企業「シンプリー・ブルー・エナジー」を子会社化

関西電力は、アイルランドの洋上風力開発企業シンプリー・ブルー・エナジー社を子会社化したと発表しました(買収額は非公表)。
シンプリー社は、発電所の初期開発段階から関わるノウハウを持ち、関電はこの知見を活かして洋上風力の事業展開を加速する狙いです。関電は2040年までに累計900万kWの再エネ導入を目標としており、海外企業との連携強化で技術力向上を目指します。

出典:日本経済新聞

3. 東京都、伊豆諸島で浮体式洋上風力の早期実装へ — 5海域で準備区域指定

東京都は、伊豆諸島周辺での浮体式洋上風力発電の早期実装を目指して検討を本格化しました。
大島町、新島村、神津島村、三宅村、八丈町の5海域がすでに国の「再エネ海域利用法」に基づく準備区域に指定されています。
都は「2050東京戦略」および「ゼロエミッション東京戦略 Beyondカーボンハーフ」で、2035年までに洋上風力1GW導入を目標に掲げています。地元研究会や住民説明会、環境学習イベントも実施し、地域共生を重視。JOGMECも一部区域で基礎調査に着手しました。

出典:日刊建設工業新聞

2025年11月第2週

1. 三菱長崎機工、46億円を投じ新工場を建設 洋上風力の浮体基礎製造拠点に

三菱製鋼グループの三菱長崎機工(長崎市)は、総額約46億円を投じて長崎市の神ノ島工業団地に新工場を建設します。新しい工場では、浮体式洋上風力発電の風車を支える「浮体基礎」や、防衛関連製品などを製造する予定です。

長崎では、溶接・切断・曲げといった造船業由来の金属加工技術を再生可能エネルギー分野に活用する動きが広がっています。今回の工場建設は、そうした地域産業の転換を象徴する取り組みといえます。

敷地面積は約6.9ヘクタールで、長崎県が造成した土地を活用します。新工場は、国内の浮体式洋上風力サプライチェーン構築において重要な生産拠点となる見通しです。

出典:日本経済新聞

2. 産業基盤構築と発電コスト低減への道(JWPA)

世界的に脱炭素化の流れが進む中、日本は再生可能エネルギー戦略の柱として洋上風力発電の開発を加速させる重要な局面にあります。

一般社団法人日本風力発電協会(JWPA)は、2025年11月10日に、洋上風力産業の黎明期から2050年までの成熟に向けた課題とその解決策、今後のロードマップを示す包括的な計画「洋上風力発電事業の産業基盤構築に向けた取組と発電コスト低減の道筋」を発表しました。

本記事では、その報告書の主要な取り組みと将来展望を紹介します。

詳細記事はこちら

3. 国内洋上風力でコスト負担が深刻化 参画企業が相次ぎ慎重姿勢

エネオスの宮田社長は、同社が参画する秋田県八峰・能代沖の洋上風力プロジェクトについて、「次のステップを検討中」と述べ、2026年1月に予定していた工事開始も再考していると明らかにしました。コスト上昇に対して電力価格が伸びない状況が事業性を圧迫しています。

業界全体でも逆風が強まっており、三菱商事が千葉・秋田の3海域から撤退したほか、日本風力発電協会の調査では第3回公募モデル比でコストが2.3倍に達するとの結果も出ています。高価格での売電契約(PPA)を確保できなければ収益性が見込めない状況です。

三井物産が関与する新潟県沖プロジェクトでも、風車の開発中止に伴う代替機種の検討や、コスト削減・売電条件の見直しが進められています。政府は撤退が発生した3海域の再公募と支援策を年内に示す方針です。

出典:Bloomberg

2025年11月第3週

1. 三菱商事撤退受け、再公募制度の審査基準を見直し

三菱商事連合が撤退した洋上風力3海域について、経産省は2026年以降の再公募に向けて新たな審査基準案を示し、応札価格に下限と上限を設ける方針を打ち出しました。第1弾では極端な低価格で落札した後に採算が取れなくなる問題が発生したため、価格配点を抑え、国内調達や計画の綿密さなど事業性を重視した内容に改めるとしています。

出典:日本経済新聞

2. 室蘭港で洋上風車メーカー誘致、地元企業の参入を促す

北海道室蘭市では洋上風車の部品製造や国内企業の参入促進を目的にシンポジウムが開催され、欧州メーカー誘致や製造拠点形成の必要性が議論されました。室蘭港は鉄鋼業など関連産業が集積しており、部材の重量と物流コストを踏まえて現地生産がコスト削減に繋がる可能性が指摘されています。

出典:日本経済新聞

3. 中国ミンヤン、英国で洋上風車の新工場を計画

中国の風力大手ミンヤン(明陽智能)は、英国スコットランドに洋上風力タービン工場を新設する計画を明らかにしました。国内市場で競争が激化するなか、導入実績の多い英国を足がかりに欧州市場で展開を強化する狙いですが、欧州側には中国企業への警戒感や採算面の課題もあります。

出典:日本経済新聞

2025年11月第4週

1. 洋上風力の撤退抑止へ、ラウンド2・3のLTDA参加を容認

政府は洋上風力の大規模入札「ラウンド2・3」の事業について、20年間の固定収入を保証する長期脱炭素電源オークション(LTDA)への参加を認める方針を示しました。世界的なコスト上昇で採算が悪化し撤退が相次ぐ状況を踏まえ、事業遂行を後押しする狙いがあります。

出典:日本経済新聞

2. 大成建設、浮体式基礎で設計承認を取得し実証へ

大成建設は浮体式洋上風力のコンクリート製浮体基礎について、日本海事協会から設計承認を取得しました。実際の工事が決まれば設計に着手できる体制が整い、国が量産化を目指す浮体式で2030年頃の実証機投入を目指すとしています。

出典:日本経済新聞

3. 北九州に洋上風力産業が集積、国内最大級が稼働へ

北九州市や長崎市では洋上風力の部材製造拠点の整備が進んでおり、北九州市沖では国内最大級の洋上風力発電所が2025年度中に稼働する予定です。北九州港は西日本で唯一、組み立てや保守の拠点となる基地港湾に指定され、再エネ導入が企業誘致にもつながっているとされています。

出典:日本経済新聞

今月のまとめ

2025年11月は、日本の洋上風力を取り巻く政策・産業・事業環境が同時に動いた月でした。前半は、グリーン水素や海外企業との提携、地方自治体での浮体式導入準備など、新分野や地域での取り組みが目立ちました。一方、コスト上昇による事業見直しや撤退といった課題も顕在化しています。

月末には、三菱商事撤退を受けた再公募制度の見直しや、ラウンド2・3案件に対するLTDA参加容認など、制度面での修正が示され、撤退リスクに対する政府の対応が具体化しました。国内では浮体式基礎や港湾整備など、産業基盤の形成が進む一方、採算性確保という構造課題が引き続き焦点となっています。

📘 2025年 洋上風力ニュース総まとめ
2025年を通じて起きた主要な洋上風力ニュースを一挙に振り返り。
プロジェクト進展、政策動向、浮体式技術のトピックを網羅しています。

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2025年の洋上風力ニュースダイジェスト

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