秋田県由利本荘市沖洋上風力発電プロジェクト

Akita Yurihonjo Offshore Wind JP

作成日:2025年1月31日|更新日:2026年9月6日

秋田県由利本荘市沖は、再エネ海域利用法にもとづく促進区域です。第1回洋上風力発電入札(通称:ラウンド1)で事業者が選定されましたが、その事業者は2025年8月に撤退し、事業は止まっています。再公募の実施時期と条件は、いずれもまだ公表されていません(2026年9月時点)。

本記事では、区域そのものの条件(海域・水深・風況・港湾・系統)を整理したうえで、第1ラウンドで何が計画され、なぜ止まったのかをたどります。再公募で決まる項目は TBD として示しています。

他の促進区域の動向もあわせて把握したい方は、全国の洋上風力プロジェクトまとめをご覧ください。

1. 区域の概要と再公募のステータス

この区域は再エネ海域利用法の促進区域ですが、第1ラウンドで選定された事業者は2025年8月に撤退しました。再公募の実施時期と公募占用指針の内容は、いずれもまだ公表されていません(2026年9月時点)。そのため事業者・供給価格・設備構成・工程は確定しておらず、下表では確定していない項目を TBD としています。第1ラウンドの数値は撤退時点の記録として併記しますが、再公募の前提としては読めません。

プロジェクト名秋田県由利本荘市沖(促進区域)
※第1ラウンドの事業名: 秋田由利本荘オフショアウィンドファーム
開発事業者TBD(再公募の公表待ち)
※第1ラウンド: 秋田由利本荘オフショアウィンド合同会社(撤退)
コンソーシアムTBD(再公募の公表待ち)
※第1ラウンド: 三菱商事洋上風力株式会社、株式会社シーテック、株式会社ウェンティ・ジャパン、三菱商事株式会社(2025年8月に撤退)
設置場所秋田県由利本荘市沖
発電方式着床式洋上風力発電
風車機種TBD
※第1ラウンド計画: GE
供給価格TBD
※第1ラウンド落札価格: 11.99円/kWh
発電容量TBD
※第1ラウンド計画: 845MW(13MW×65基)
建設開始TBD
※第1ラウンド計画: 2026年3月(陸上)、2029年4月(洋上)
運転開始TBD
※第1ラウンド計画: 2030年12月

2. 設置場所

2-1. 海域・地理的特徴

海域面積約13,040ha、水深15~30m程度。平均風速が高く、GE社Haliade-X 13MW大型風車を採用。

Akita Yurihonjo Offshore Wind location
出典:秋田由利本荘オフショアウィンドファーム

2-2. 港湾インフラ・系統接続

第1ラウンド計画では、建設時に秋田港、運転・保守時に本荘港を拠点とし、東北電力ネットワークの河辺変電所へ系統連系する想定でした。

3. 発電設備概要

Akita Yurihonjo Offshore Wind overview
出典:METI公開資料(秋田県由利本荘市沖(北側・南側)洋上風力発電事業 概要説明)

4. プロジェクトスケジュール

4-1. 全体スケジュール

  1. 開発・設計フェーズ(2021年~2026年)
    • 2021年12月:公共入札の受注
    • 環境影響評価、風況、波浪、海底地質調査
    • FIT 申請および許可
    • 地元関係者説明・同意
    • ウィンドファーム認証、工事計画届
  2. 建設フェーズ(2026年~2030年)
    • 2026年3月:陸上変電所と送電インフラの建設
    • 2029年4月:洋上基礎とケーブルの設置
    • 2029年:風力タービンの組立と設置
  3. 運用・保守フェーズ(2030年~2052年)
    • 風車の維持管理:GE
    • 操業・保守(洋上):北拓
    • 操業・保守(船舶保有・管理):日本郵船
    • 操業・保守(陸上系統):シーテック
  4. 撤去・再発電フェーズ(2052年以降)
    • 風力発電設備の寿命終了時の計画
    • 将来のエネルギー政策に基づく再稼働の可能性
Akita Yurihonjo Offshore Wind schedule
出典:METI公開資料(秋田県由利本荘市沖(北側・南側)洋上風力発電事業 概要説明)

4-2. EIA(環境影響評価)の進捗状況

事業名称
Project name
事業者名
Developer
手続段階
EIA Stage
容量
Capacity
基数
Turbines
出力
Rating
更新日
Last Updated
(仮称)秋田県由利本荘市沖における洋上風力発電事業
Akita Yurihonjo Offshore Wind
秋田由利本荘オフショアウィンド合同会社
Akita Yurihonjo Offshore Wind LLC
方法書
Method Statement
Up to 910MW6512.6 – 14MW2022/12/06
出典:環境アセスメント事例情報(環境省)
Source: Environmental Impact Assessment Case Information (Ministry of the Environment, Japan)

5. 事業計画をゼロベースで見直し?

三菱商事は、国内3カ所の洋上風力発電プロジェクトの見直しに伴い、2024年4〜12月期に522億円の減損損失を計上したと発表しました。中西勝也社長は記者会見で「減損は重く受け止めている」とし、今後の事業方針をゼロベースで検討する意向を示しました。

5-1. 減損の原因と今後の方針

三菱商事は2021年の入札で3案件を受注し、約3年間開発を進めてきたものの、世界的なインフレ、円安、金利上昇などの影響でコストが想定を大きく上回りました。そのため、採算性を再評価しており、最終的な事業継続の判断は今後決定するとしています。

また、計上した資産のほぼ全額を損失処理しており、今後追加の減損が発生する可能性はあるものの、影響は限定的と説明しました。

5-2. 減損損失の内訳

  • 調査・設計・許認可取得の費用を資産として計上していたが、今回すべて損失処理。
  • 既に支払った費用に加え、今後発生予定のコストも含めた総額が522億円。

5-3. 入札時の価格設定について

2021年の入札では、三菱商事は競合他社を大幅に下回る低価格で落札しましたが、同社は「エネコの知見を活用し、リスク分析を行った上での判断だった」と説明。結果として、想定以上のインフレやコスト上昇が事業の採算性に大きく影響したとしています。

5-4. 洋上風力事業の今後

三菱商事は、洋上風力が脱炭素社会の重要な電源であることを認識しており、今後の事業方針については、インフレや金利、為替動向などを踏まえて慎重に判断する方針です。

6. 三菱商事連合、国内3海域の洋上風力から撤退(8月26日)

三菱商事とパートナー企業は、千葉県および秋田県沖で進めていた3件の洋上風力発電プロジェクトから2025年8月に撤退しました。

6-1. 撤退の背景

今回の判断にはいくつかの要因が重なっています。

  • 入札での極端に低い落札価格
  • 資材価格や建設コストの上昇
  • 経済的な成立性が見込めない状況

結果として、これらのプロジェクトは当初の採算性を維持できないと判断されました。これは、日本政府が推進してきた大規模再エネ事業にとって、象徴的な挫折といえます。今後は再公募が行われる見通しですが、コスト競争とサプライチェーンの現実、そして資金調達環境との折り合いの難しさが改めて浮き彫りになりました。

6-2. 今後への含意

この撤退が意味するものは少なくありません。

  • 日本の洋上風力戦略そのものが再検討を迫られる可能性
  • 2030年(10GW)、2040年(30〜45GW)の国家目標に向け、時間的な余裕が一段と縮小
  • 政府が再エネ政策をどのようにリセットし、投資環境を整えるかが投資家の信頼回復に直結

特に、入札制度とプロジェクト実現性のバランスをいかに取るかが、今後の市場成長の鍵となるでしょう。

7. LCOE・IRR推定

洋上風力プロジェクトの事業性を評価するうえで、LCOE(均等化発電原価)やIRR(内部収益率)といったコスト関連指標は極めて重要です。しかし、日本の促進区域における具体的なコスト情報は公開資料が限られており、投資家や事業者にとって十分な判断材料が整っているとは言えないのが現状です。

そこでDeepWindでは、各案件の代表地点における風況・水深・港湾距離・系統連系点までの距離を入力パラメータとし、独自のコストモデルを用いてCAPEX・OPEX・LCOE・IRRを推定しています。これにより、促進区域プロジェクトの相対的な事業性ポジションを横断的に整理しています。

最新の前提条件および相対評価については、以下のコスト分析Pillar記事をご参照ください。
👉 日本の洋上風力 促進区域プロジェクト コスト分析(最新版)

再公募で確定していないこと

第1ラウンドで選定された事業者は2025年8月に撤退し、経済産業省と国土交通省は2025年12月23日に撤退要因の分析を公表しました。本区域は促進区域のまま残っていますが、再公募の実施時期と公募占用指針の内容はいずれも未公表です(2026年9月時点)。

したがって、事業者・供給価格・設備構成・運転開始時期のいずれも、現時点では確定していません。本記事に残した第1ラウンドの数値は撤退時点の記録であり、再公募の水準を示すものではありません。指針が公表され次第、上表の TBD を更新します。

撤退に至った要因は制度設計の側にも及びます。詳しくは👉 第1ラウンド洋上風力は、なぜ撤退に至ったのか をご覧ください。

再エネ海域利用法における「促進区域」の一覧は、洋上風力促進区域12プロジェクト一覧 ― 再エネ海域利用法の最前線でご確認いただけます。

DeepWind Premium Report

日本の浮体式洋上風力は、なぜまだバンカブルでないのか?

同期する供給網ボトルネックをノード別に定量化し、全感度分析とバンカビリティ・ラダーで「何が満たされれば拡大に進めるか」を整理。全数値を自分の前提で再現できる Simulator Professional (β) アクセス同梱。

分析を見る →
※詳細・価格は商品ページをご覧ください
浮体式洋上風力:バンカビリティ・テスト — DeepWind Premium レポート #4 表紙
上部へスクロール