浮体式洋上風力とは?基本構造と設計・認証の全体像をわかりやすく解説

Floating offshore wind basic

はじめに 〜なぜ今「浮体式」なのか?

洋上風力発電は、日本の再生可能エネルギー導入拡大のカギを握る技術です。その中で、日本の深い海に適した技術が**浮体式洋上風力(FOWT:Floating Offshore Wind Turbines)**です。

なぜ今、日本で浮体式が注目されているのかは、以下の記事で詳しく解説しています。
➡️ Part1: なぜ今、浮体式洋上風力なのか?

本記事では、再エネ技術者初心者の方に向けて、「浮体式洋上風力とは何か?」を構造と設計視点で体系的に解説します。すでにDeepWindで公開している「型式詳細」や「市場背景」の記事と重複しないよう、以下の内容に絞ってわかりやすく説明します。

  • 浮体式洋上風力の基本構造(浮体施設・RNA・係留設備)
  • 浮体式特有の設計・認証プロセスの全体像
  • 法規制・ガイドラインとの関係

本記事ではこのテーマを深掘りしますが、洋上風力の全体像を体系的に把握したい方は、こちらの技術総まとめ記事もあわせてご覧ください:
👉 洋上風力の技術と未来:基礎から浮体式・タービン・最新動向まで総まとめ【2025年版】

1. 浮体式洋上風力とは? 〜構造と仕組みの基本〜

**浮体式洋上風力(FOWT)**は、水深50m以上の海域に風車を“浮かべて”発電する技術です。

着床式のように海底に杭打ちして固定するのではなく、海面に浮かぶプラットフォーム(浮体)の上に風力発電機を設置し、アンカーと係留ラインで所定の海域に留めます。

これにより、深い海域でも風力発電が可能になります。特に日本のような急深な地形では浮体式が適しています。

浮体式プラットフォームの型式や詳細構造は、以下の記事で詳しく解説しています。
➡️ Part2: 浮体式プラットフォーム設計:主要型式と特徴を解説

2. 浮体式洋上風力の3つの主要構成要素

浮体式洋上風力は、次の3つの主要要素から成り立っています。

2-1. 浮体施設(Floating Platform)

  • タワーと風力発電機(RNA)を搭載するプラットフォーム部分
  • 半潜水型、スパー型、TLP型などの構造形式
  • 波や風で倒れないよう、復原性(安定性)が重要
  • 浮体そのものの構造設計が必須(耐力、疲労、腐食対策など)

2-2. RNA(Rotor Nacelle Assembly)

  • ローター(ブレード)とナセル(発電機、増速機など)からなる風車上部構造
  • 陸上風力や着床式と同じ構造が使われることも多い
  • 型式認証を取得したRNAを用いるのが基本

2-3. 係留設備(Mooring System)

  • 浮体施設を所定の位置に固定するための設備
  • アンカー、係留ライン(チェーンやロープ)、中間ブイなどで構成
  • 多点係留(Spread Mooring)やテンション係留(TLP)などの方式あり
  • 海底地盤条件や水深に応じた設計が必要

この3つが一体となり、「浮かぶ風力発電所」として機能します。

3. 浮体式特有の設計・認証プロセス

浮体式洋上風力では、タービン単体の設計だけでなく、浮体・係留設備まで含めたシステム全体の設計・認証が重要です。

3-1. 設計の全体像

  • 風況・波浪・水流などの外部条件設定(サイト特性に応じた設計環境)
  • 浮体・RNA・係留の相互干渉を考慮した動的解析
  • DLC(設計荷重ケース)に基づく荷重解析・耐力設計
  • 腐食・摩耗・係留ライン疲労など長期耐久性の確保
  • 海洋付着生物や津波など特殊条件も評価対象

設計時のコスト評価やLCOE(発電単価)の考え方については、以下の記事で整理しています。
➡️ Part3: 浮体式洋上風力のコスト構造・LCOE

3-2. 認証・規制のフレームワーク

種類内容
型式認証RNA(風力発電機)単体の設計安全性を評価
プロトタイプ認証実証機など限定用途の場合に取得
ウィンドファーム認証浮体・係留含む発電所全体の安全性・性能を評価
船級検査浮体構造物としての安全性を確保(NKRE-GL-FOWT01等適用)
国内法規国交省技術基準、電気事業法、港湾法等への適合

日本の規制や認証取得における課題については、以下の記事で詳しく解説しています。
➡️ Part4: 日本の規制・認証に関する課題

3-3. 浮体式導入に向けた設計時の重要ポイント

  • 浮体施設の安定性確保(復原性、喫水、耐久性)
  • 係留設備の長期耐久性設計(腐食、摩耗対策)
  • 風車制御への影響(浮体の動揺がRNAの制御に与える影響を考慮)
  • 検査・メンテナンス性(昇降設備や係留点検の容易さ)
  • 国内ルール遵守(特に日本独自の地震・津波考慮)

実際の実証プロジェクト事例は、以下の記事で紹介しています。
➡️ Part5: 実証プロジェクト事例:浮体式洋上風力

今後の技術動向・市場展望については、以下の記事で解説しています。
➡️ Part6: 2030年までの技術・市場トレンド

まとめ 〜浮体式洋上風力の“全体像”をつかむ〜

浮体式洋上風力は、単なる「海上風車」ではなく、浮体施設・RNA・係留設備が一体となったシステムです。

設計段階では、次のような視点で全体最適を図ることが重要です:

  • 各構成要素の役割と相互作用を理解する
  • 設計荷重・環境条件を適切に設定する
  • 法規・認証取得まで含めた設計プロセスを描く

これから日本でも拡大する**「浮かべる風力発電」**。今後も浮体式洋上風力に注目していきます。

洋上風力の最新技術や今後の展望について、より幅広く知りたい方は、以下の総まとめ記事をご覧ください:
🌊 洋上風力の技術と未来:基礎から浮体式・タービン・最新動向まで総まとめ【2025年版】

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